鏡像 表の恐怖

 巨大な白クジラは目を覚ます気配はなかった。


「こんなにデカイ異種族を見たのは初めてだ……まだ起きないでくれよ……」


 アロガンはずっと近くの岩場に腰を下ろしていたが、落ち着きがない。グシャンは一言も喋ることなく、ただじっと息を殺してアロガンの横に立っていた。


「こっちです!」


 しばらくするとグランド率いる町の男たち数人が、カウアドに案内されてやってきた。


「なんだ……これは」


 ほとんどの者があまりの大きさの異種族に驚き、恐怖で身を固めている。ひるんで後ずさる者もいた。


「ここから立ち去れ!」


 グランドが一歩進み出て、白い巨大な異種族の正面で叫んだ。


「ここから立ち去れ!」


 白い巨大な異種族が、グランドの叫び声に反応して目を覚ます。大きな瞼がゆっくりと開いていき、中から巨大な眼球が現れる。皺に埋もれた眼球は、ビカビカと黒い光彩を放っている。体をゆすって男たちを見た。


 グランドを除く大勢の者が狼狽え怖気づいた。動転して逃げ出す者もいた。

 グランドは再び白い巨大な異種族に向かって叫ぶ。


「ここから立ち去れ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る