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ハトと私が出会ったのは、2000年になったばかりの冬。
2000年という新しい年に、世間はキラキラした希望で満ちていた。
だけど、私は何の希望もないまま退屈な日々を過ごしてた。そんな中、二人の出会いは意外な形で訪れた。
あの頃の彼は、どんな思いだったんだろう?
新しい時代の幕開けに、どんな気持ちで生きていたんだろう?
ただ一つ言えることは、苦しそうだったということ。
それでも必死で生きていてくれたこと。
あの頃の私も、必死でもがいてた。
自分の居場所という部屋を、一生懸命探していたら。
友達が欲しかった、仕事が欲しかった。
そして何より、 私のことを丸ごと理解してくれる人が欲しかった。
それが家族ではなく、血の繋がらない誰かを必死で求めていた。
だけど全く見つからなくて、見つけたくて、もがき苦しんだ日々。
本気で死にたいと悩んだこともあったけど、
残念ながら、私は自分の力だけで命を落とすことができない。
そのことを、痛いほど分かってるからこそ、余計に死んでしまいたかった。
そんな時、ハトからの突然のメッセージ。
【はじめまして】と。
あの日のことは、一生忘れられない。
彼が残してくれたメッセージの場所は、インターネットという巨大な空間の中の、豆粒みたいな小さな私のホームページ。
私の日記と掲示板しかない。
だけど、私にとってここが、自分が自分でいられる唯一の場所。
ちっぽけな日常を詩に変換した、
私の日記。
そして、100文字程度ぐらいしか書けない、小さな掲示板。
そこにハトのメッセージが確かにあった。
今でも思い出すとドキドキする。
掲示板にはいくつか色んな人がメッセージを残してくれていたけど、
なぜか、ハトの言葉だけが私の心に響いた。
【一生懸命で、素敵な毎日ですね】 と。
素敵な毎日?
どこが?
私の大したことのない日常を、【素敵】だと言ってくれるハト。
一瞬戸惑ったけれど、
自分では一度も素敵だなんて思ったことがなかったから、ハトの言葉が、私の心を涙でいっぱいになった。
今すぐ返事を送りたい!
掲示板の返信欄じゃなくて、直接私の気持ちをハトにだけ聞いてもらいたい!
にぶく動く右手の人差し指が、気づけば信じられないほど自由にキーボードを叩いていた。
幸いなことに、彼は自分のメールアドレスと、そしてURLを残していた。
今思うと、これは奇跡た。
ハトがこれらを残していなければ、
この巨大なネットの世界で2人が交わることはなかったからだ。
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