第4話 アタック開始
「おい、タムタム。この街にベイカーがいるって言うのは本当の話なのか?」
パーティーで一番でかいガルフと一番小さいタムタムが並ぶと、身長差が半端ない。
「ボクの情報網によると、間違いないはずなんすけど…あの人が隠密スキルを発動したら誰も捉えられないっすよ」
「森に潜んだオレの背後を取ったのは、アイツが初めてだ」
その時の事を思い出したのだろうか、苦々しげに
それを聞いたガルフが可笑しそうに、
「しかも背後から言ったのが、『見張りを交代します』だったんだろう?あやつらしいわ」
「人の汚点を茶化すな、やんのかこの脳筋ゴリラ!」
降ろしたことのないフードの奥からオレンジ色の目がガルフをにらめつけている。
「脳筋ゴリラだと?上等だ!」
そう言うと、ガルフは身の丈以上ある盾を地面に突き刺す。
「ちょっ!オスカーさん、ガルフさん何やってんすか?今回はクランのリードパーティーなんすから、ケンカは勘弁してくれってお願いしたっすよね」
タムタムが慌てて仲裁に入った。
「まったく…あなた達はベイカーの事になると、どうしてそう節操がなくなるのですか?」
ライオット姫が呆れつつ言うと、
「
と、姫を除く全員からツッコミが入った。
「決まっていた上級ダンジョン攻略を蹴っ飛ばして、この初級ダンジョンの調査を強引に決めたのは誰でしたっけ?」
「それは!別にベイカーの事が気になってじゃなくて王国にとってダンジョンの異常は見過ごせない事態であるからに相違なくてだからベイカーの居所がわかったからって喜び勇んで来たわけではないのだよ諸君」
「
支離滅裂な言い訳を並べ立てるライオット姫に対して、またもや全員からツッコミが入る。
「とにかく!ベイカーの事とは関係ないんだからね。さっさとベースキャンプに向かいましょう」
と言うと、ライオット姫は白銀の甲冑を鳴らしながら逃げるように歩き始めた。
ロイヤルワラントのメンバーがダンジョンに到着すると、すでにダンジョンアタックは開始されており、中層まで制圧が完了していた。
クランで攻略するメリットが最大限活かされていた。ロイヤルワラントは雑魚モンスターの相手をする事なく、下層への調査を開始出来る。
ダンジョン内の要所毎に配置されているパーティーに労いの声を掛けながらロイヤルワラントは進む。
下層に突入すると、オーガ達が襲いかかってきた。
やっと身体を動かせるとばかりに、ガルフが大盾でオーガの突進を受け止める。
オスカーとニッキーは後方に距離を取ると、弓と攻撃魔法で広場に溢れるオーガを次々に倒して行く。
ライオット姫は、ガルフの脇をすり抜けたオーガを冷静に切り取っている。
タムタムとモナは基本、戦闘には参加しない。モナはメンバーが傷付かなければ出番はないし、タムタムはダンジョンの地形把握に専念している。
場数を踏んでいるパーティーだけあって、決して弱くはないオーガの大群を相手にしても、淡々とそれぞれの役割を全うしている。
ついさっきの仲違いが嘘のような連携行動である。
しかも個々の戦闘能力が化け物級のメンバーが揃っているので、広場に溢れていたオーガ達も圧倒的な力には抗えず、全てが横たわっている。
後方の高台から戦闘の様子を伺っていたタムタムが降りてくると、目星を付けた方角の穴へと向かう。
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