バイブ

 ヴーン、と、機械的な音が布団の中から聞こえる。目隠しをされたかのような野ばらはどこか顔が熱く、暗闇でも体調が悪いと分かった。

「野ばら、大丈夫? 無理して我慢しないでいいんだよ?」

「だって今日バイトあるもん…。」

「…いってもいいんだよ?」

「無理。」

 即答されたが、呼吸は荒い。百合愛がそっと襟から手を入れて何かを取り出す。

「ふぁ!?」

「ん?」

「一言言えよ、ビックリするだろ!」

「ああ、ごめんごめん。そろそろ分かるかと思って。」

 しかし百合愛が期待した反応は出ていなかった。

「はぁ…。」

「あと何かほしいものとかある?」

「とりあえずこの機械、全く気持ちよくない…。」

 そう言って、野ばらは目隠しを指さした。ヴーンヴーンと伸縮を繰り返し、気持ち良いところを揉み込む動きが、どうも野ばらの骨格に合わないらしい。

「うーん、高かったんだけどな、このアイマスク。」

「無いよりマシだよ…。」

「まあ、知恵熱だと思うし、こっちは黄砂が飛ぶらしいし、ゆっくり安静にしてなよ。」

「締切…。」

「大丈夫大丈夫、2万文字くらい1日でかけるよ」

「12時間で3.4万字書くお前と一緒にするな。」

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