声が聞こえる

 「星を喰らえ」という声がする、と言うと、「ゲームのしすぎ」と言われるだろうか。

 「届かない、届かない」と言えば、それは贅沢に見えるのだろうか。

 どんなに豊富な資料を積み重ねても渇きは癒えない。収支報告も何も無い組織に金を注ぎ込ませて、それだけの事を強いている自覚はある。

 滞納だ〜滞納だ〜カードが止まる〜と歌っている彼女の身体は、燃え上がる闘志と義憤で動いている

。夜、寝たフリをしたまま様子を見ると、「ここにいた」と、安心したように抱きついてくる。

 家族の絆や事情はどこもしっちゃかめっちゃかだから、どんな人間も関わりたくないのは分かるつもりだ。

 それでも。


 命懸けでキリスト教やってない!!

 イエズス会の本部にいる神父様よ、籍もない外様の信者が声をかけていい存在じゃないの!!


 あの■■■が何度でも呼びかける。

 ギリシャ語で聖書が読めるだけじゃダメだ。ヘブライ語で聖書が読めるだけじゃダメだ。コプト語写本が読めるだけじゃ…中世ラテン語資料が読めるだけじゃ本文批評ほんもんひひょうが出来るだけじゃ…。


「…墜ちろ。」


 神よ、どこまでもどこまでもひとであれ。

 貴方が救いたかったのは、私たちのはずだ。

 貴方が食卓を囲んだのが、国民の98パーセント以上を占めた貧困層だと言うのなら―――。


 神の体から切り離され、痛まれることのない私たちや、教会から追い出された私たちの友人の元にこそ、来るはずだ。

 その姿を変えて、来るはずだ。


 力を。力を。力を。

 立ち上がれ。支えてくれる人なら今、腕の中に、掌の中にいる。

 机へ迎え。金もなく、教会いえもなく、人と触れ合い罪を犯す舌はあげてしまった。

 書け、書け、書け。

 私にはこれだけのものがある。何もかも失った訳ではない。何もかも最初から足りてない。


 星を喰らえ。なお届かぬ闇の先へ手を伸ばせ。

 その闇を切り裂く叡智の光は、まだ弱くても灯っている。


「百合愛、どうした?」

「紅茶ほしー。おかわり。」

「トイレ近くなっても知らないぞ」

「金平糖を入れて飲む紅茶は中々味わい深いねえ。」

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