第6話 測定不能

 俺は魔法陣の中に入ると、両手を組み、片膝をついた。そして全力の祈りを神に捧げた!

(かっこいい魔法をください! できれば属性系魔法がいいです! さっきの響きのような。

 炎とか、雷だと被っちゃうので、風や土の属性魔法をください! お願いします!お願いします! 神様! 大好きです!)


 頼み方がこれでいいのかは分からなかったが、俺はとにかく色々祈ってみた。これで上手くいくだろう!


 俺が祈り終えると魔法陣が輝きだし、やがて俺の体も光り始めた。体の全体から何かが溢れ出すのがわかる。俺の体から出てきたオーラは紫色だった。


「よし! 君も成功だな! こっちへ来い。魔法を確認しよう!」


(頼むぞ! 神様! 良い能力を出してくれたら、朝晩、二回必ず祈りを捧げるし、お供物もします! だから、頼む!)

 そんな事を考えながら国王の元に辿り着くと、俺は紫色のオーラに覆われている右手を箱の手形に合わせた。


 すると、「ビーッ」と言う音を立てながら一枚の紙が印刷された。二枚目はいつまで経っても出てこなかった。


「えっ? 一枚だけ? なんで俺だけ一枚だけなんだよ! なぁ国王様!」

 出てきた紙が一枚しかないことに俺は不満が込み上げる。千歳もひびきも二枚以上出たのになんで俺だけ一つだけなんだ? くそっ。訳がわからん。


「うるさいのう! さっきも言っただろ! 一つしか出ないこともあるんだ! 仕方がないだろう。これは神が決めることなのだから」


 国王はそう言いながらも従者から紙を受け取り眺めた。すると、ひびき達の時とは異なり黙り込んでしまった。小さく、どう言うことだ、わからん。とか呟いている。


俺は慌てて国王が手にしてる紙を見た。

そこにはこう書かれていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


魔法名 【生物使役】  ランク 測定不能

 二十四枚のカードに生物を封印することができる。封印した生物は自由に使役することができる。封印するための条件は三つ。

一、対象の生物を直接見ること

二、対象の生物に直接触れること

三、対象の生物にHPのうちの一割以上のダメージを与えること

なお、ランクが高い生物であればあるほど、召喚可能時間は短い。召喚可能時間がなくなると

封印は解除される。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(生物使役魔法? 生き物をカードに封印することと、使役することができるってことか? どうなんだ、この魔法は? っていうかなんななんだよ。ランクが測定不能って。いい魔法なのかどうかわからないじゃないか!)


「あの、この魔法って、どうなんですかね……」

 俺は恐る恐る、国王に尋ねてみた。もし、ダメな魔法だと言われたら絶望してしまうだろう。俺にはこれしか魔法が出なかったのだから。


「うーむ。すまんがわしもわからんのだ」

国王は考え事をするように自分の長い顎髭を触っている。

「えっ?」

 その言葉に俺は驚いてしまう。この世界は魔法があるのが当たり前なんだよな? こんなに長生きしてそうな国王でも分からないのか?


「今までにこんな魔法は見たことも聞いたこともないのじゃ。すまん!」

「えっ! じゃあ、その箱の機械を作ったのは誰なんですか? 色々な魔法を知り尽くしてるから、判別する機械を作れたんですよね?」

俺が質問するよりも早く、ひびきが尋ねた。国王の言葉に驚いたようだ。


「この道具はな。三百年前にある遺跡から掘り起こされた遺物なんだ。わしにも、道具の仕組みはわからない。代々わが王家に受け継がれてきた物なのだが。今までの古文書にもそのような魔法を記されていないんだ」

「じゃあ、結構珍しい能力なんですね?」

「そうだな。使ってみないと、どれだけ役に立つかもわからない。このフロアには魔物はいないから、ダンジョンに入ってから色々試してくれ」

「……わかりました」


(記録にも残っていないほど珍しい魔法か……。なんかそれだけ聞くとかっこいいな。生物を封じ込め、使役するというのもなんか厨二病的でかっこいい。だがな!!神様! 酷いじゃないか!! あれだけ祈ったのになんで属性系魔法じゃないんだよ!! しかも、魔法一つだけって……。ひびきは四つも得ているのに!! 二度と祈ってやらないからな!!)


俺は、神に溢れる不満をぶつけながら魔法陣から離れた。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る