第3話 予想外の展開


 壇上には、「知っていた」人間がずらりと並ばされた。

 向かって右、上手の方から順に並ばされたため、やや遅くに壇上に上がったM田くんは、左、下手に近い場所に立っている。


 B先生は、先頭に当たる、一番右に立つ生徒の前へ移動した。

 「お前は、いつ知った?」

 「……土曜です」

 「なんで、先生に報せへんのじゃ!」

 バチーーンと強烈な平手。

 吹っ飛ぶ生徒。


 二番目の生徒の前に移動するB先生。

 「お前は?」

 「ど、土曜日の夜です」

 「電話できるやろがッ!」

 バチーーンと強烈な平手。

 吹っ飛ぶ生徒。

 女生徒でも容赦なし。


 このとき、壇上に並ばされた生徒たちの中、M田くんだけは安堵していたと思う。

 B先生は暴力をふるうが、頭のおかしい先生では無く、言葉が通じる。

 M田くんに「お前は、いつだ?」と問い、M田くんが「今、さっき、教室から、この体育館に来るまでの間に、Aくんから聞きました」と答えれば、さすがに張り飛ばすことはしないであろう。


 「お前は?」

 「金曜日です」

 バチーーン!

 「お前は?」

 「土曜日です」

 バチーーン!

 処刑は次々と行われ、次の次がM田くんの番となった。

 そのとき、とんでもないことが起こったのである。


 「もういい!」

 ブチ切れたB先生が、「お前は、いつ知った?」と聞くことも無く、M田くんの隣の生徒を張り倒したのだ。

 M田くんは、ギョッとしただろう。

 そして、ギョッとしたまま、その流れで、張り倒された。

 M田くんの後に並ぶ、三人ほどの生徒も、次々と張り倒されていった。

 ……M田くんもそうだけど、この展開には、見ていた私たちも言葉を失った。


 体育館から教室へ戻る間。

 「エグいのう」

 「いけるか、M田?」

 「あれは笑えるわ」

 と、M田くんの周りに集まり、みんな大笑い。

 「無いわ。あれは無いわ。

 おれにも聞けや、B先生」

 と、片ほほを腫らしたM田くんも苦笑い。

 

 おもしろい話になったから、平手一発ぐらいなら、当人がまあ良しとする、なかなかに野蛮な当時の風潮でした。

 

 可哀そうなのは女生徒たち。

 不良やらケンカやらに、まったく無縁の女生徒の中にも、回り回って友達から話を聞いてしまった子が、何人もいたらしい。

 張り飛ばされた女子自身もショックだったが、それより、その女子に何の気なしに話してしまった女子が、罪悪感で泣きながら謝り倒し、過呼吸になるほどであった。

 ひどい話である。



 非が無いのに張り飛ばされてしまったM田くんだが、後日、C先生から、とんでもない目に遭うことになった。


 今回のB先生は、暴力をふるうが、頭のおかしい先生では無く、言葉が通じると書いたが、C先生は、暴力をふるい、且つ、言葉の通じない先生であった……。

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