第2話

有名歌手の死のニュースは各新聞社の表紙を独占し、世間から大注目を集めた。

連日報道陣が自宅に押しかけ、私も父も自由に行動することができなくなった。そのニュースは瞬く間に学校中にも広まり、それまで有名歌手を母に持つ学校中の憧れだった私は、たちまち「可哀想な女の子」として注目の的となった。仲の良かった数人の女友達も気まずそうに私と距離を置くようになっていった。それでも、私にとってそんなことはどうでも良かった。周囲からどれだけ哀れな目で見られようと、腫れ物扱いされようと全く気にならなかった。

私が許せなかったのは、母が非難されることだった。母の死に関して、様々な情報が飛び交っていたが、『台頭する他の歌手への嫉妬に耐えられずに自殺』、『夫婦の確執により、最愛の我が子を見捨てて自殺』など、憶測で好き勝手に書かれたものばかりだった。

母はそんなに薄情で弱い人間じゃない。

近くにいる私にしかわからない母のことを他人にとやかく言われる筋合いはない。母への心無いコメントに触れる度に私は憤りを感じ、居ても立っても居られず、癇癪を起こしていた。

その一方で、父はこの一件に関して、一切口を割ることは無かった。報道陣にしつこく質問攻めをされても、一貫して無言で立ち去る姿勢を崩さなかった。私と父の間でもこの話をすることはなかったので、私は父の感情がわからなかった。


結局、いつも冷静な母が車で急ハンドルを切り、ガードレールに突っ込んで死に至った謎の真相を知ることはなく、次第に世間から注目を集めることもなくなっていった。

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