第27話 ダンジョン図鑑の進化
『【ダンジョン図鑑 ハージマル】2階層の踏破が100%になりました。ボーナスとして腕力が1上がります』
ルークの頭の中で女性の声が流れた。
「よし、ここで2階層は完全踏破になった。小さなダンジョンだけど全ての通路を歩くとなると、意外と時間がかかるな」
「うん。でもそのおかげで宝箱見つけられたんだよ。しかも2つも!」
「……ん。どっちもポーションだったのは残念ニャ」
「アハハハ。でもそのポーションのおかげで、ダンジョン図鑑のアイテムは種類だけじゃなく、宝箱の数でもカウントされることがわかった。これは大きな発見だよ」
ルークは『ステータス』でダンジョン図鑑を確認する。
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ダンジョン図鑑
・ハージマル
魔物(4/8)
アイテム(6/15)
踏破(1~2階層:100%)
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ルークは図鑑を見て笑みがこぼれる。前回勇者だったときは、太陽の女神ノエルから出されるお告げという名の命令、それをひたすらこなすだけの奴隷のような生活だった。
それが今はどうだ!? 自分のおもうがままに時間を使える! さらに図鑑を
エリンとシャルが休んでいる間、ルークはダンジョンの壁を机代わりに、今日の課題である地図をものすごいスピードで書き上げていた。
それを見ていた2人は、その人間離れした技能に声を失う。
「よし、これで今日の課題はできたぞ。パーティーで1枚提出だから、これで大丈夫だ」
「る、ルーク君。まさかと思うけど、そこに書いてある通路の長さって……」
「ああ、もちろん正確な距離だ。僕はどんなことにも手を抜かないからね」
「エェェェェェェェ! おかしいよ。だってルーク君がメモを取るところなんて見なかったよ」
「……ん。それに移動しながら戦ってた。けど……その地図はあってる。シャルのイメージと大体合ってるニャ」
「えっ、シャルちゃんも地図書いてたの?」
「エリン、それは違うぞ。猫人は一度歩いた道は覚えるんだ。方角とかもなんとなくわかるらしい」
「……ん。シャルはハーフだけど、なんとなく歩いた道は分かる。もしかして……ご主人様も猫人かニャ?」
「アッハハハ。違うよ。タネ明かしをすると歩いた道はダンジョン図鑑に記録されるんだ。僕は頭の中でその図鑑を自由に見ることが出来るから、それを見ながら地図を書いただけなんだ。ちなみに宝箱があったところにはマークが付いてたよ」
「す、凄すぎるよ! もしかして、今自分がいる位置も地図に……」
「ああ、もちろん現在地と見ている方向までマークされている」
「る、ルーク君がいればダンジョンで迷子になることはないんだね」
「ご主人様、ずるいニャ。猫人のシャルよりも凄いなんて……」
シャルが軽くショックを受けているのを見て、ルークは言うのをやめたが、このダンジョン図鑑の地図は、前回までは通路が書かれるだけだった。マークや現在地が表示されるようになったのは、ついさっきだ。
つまり『収集家』の熟練度が上がることでこの地図は進化していたのだ。
◇
ルーク達がシエル先生のいる広間へ向かって歩いていると、通路の横からドラン達『英雄の集い』が出てきた。サミエルとトムは息を切らしていた。
「やあ、アリス。何かあったのか?」
「る、ルーク……」
ドランとアリスはばつの悪そうな顔をして、ルークから目をそらす。ルークはすぐに『英雄の集い』がどこで何をしてきたのか気づいた。
「ああ……サミエルとトムのネズミに噛まれたような傷跡。3階層に行ってきたのか。それでどうだった? まあ聞かなくてもその様子を見れば分かるけどね」
アリスの意見により一度は3階層を撤退したものの、ドランの強い希望でその後も何回か攻略を繰り返してきた帰りだった。
「ぐっぬぬぬぬ……ズルとは言わせないぞ。あの契約書には『ハージマルダンジョンのボスを先に倒した方が勝者』としか書いてないんだ」
「もちろんだよ。ズルなんて言わないさ。あとパーティーメンバー以外の力を借りるのは禁止ってことも忘れないようにね」
「フン。ボク達は剣聖と勇者だぞ。他人の力なんて借りるかァ!」
興奮するドランを無視してルークは歩き出す。その後ろ姿をアリスはいぶかしげに見ていた。
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