第2話 女神からの贈り物
「な、なんだい! この邪悪な光は……」
「おい、あの子供を見ろ! 身体が紫色に光り出したぞ!」
驚きと言うよりも、絶叫が教会のあちらこちらから上がる。
禍々しい赤黒い光が水晶とルークの身体を包んでいたのだ。
しばらくして黒い霧のようなものが散り、紫色に発光していたルークの身体も何事も無かったかのように元に戻る。
そして右手の先にある水晶には、大きなヒビが入っていた。
「ルーク! 大丈夫かい! あんた今のは一体……」
ルークの額には嫌な汗が流れていた。
……今のは呪いだった。しかも最高クラスの呪具を使っても、あれほどの呪いはかけられない。
そしてありえない程のコントロール。周りに一切被害が出ていない。
こんなこと勇者や魔王だってムリだ。それこそ神の領域……神?
ま、まさか! 俺は急いで確認する。
「ステータス!」
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【名前】ルーク
【レベル】1(固定)
【職業】
【スキル】コレクト、リリース
【称号】太陽の女神に仇なす者
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よしっ! 初めて見る職業だが、名前からして運命ルートはなさそうだ。
ん? ちょっと待て、なんだこの『太陽の女神に仇なす者』って称号は!
なになに……私からルークへの贈り物よ。人生いつまでも楽しめるようレベルは1に固定。そして今後一切、私からの恩恵は得られない。泣いて後悔なさい……
やってくれたな! あのクソ女神がァァァァァァ!
レベル1から上がらないって……完全に詰んでるよな。人生を楽しむどころか、お金を稼ぐのすら困難。さらに女神の恩恵が得られない……。ん? これってどういう意味だ?
「……ル……ルークよ。大丈夫か? しっかりするんだよ」
「え、あ、マドリー様。すいません。ちょっと考えごとをしていました。どうかしましたか?」
「どうかしたかじゃないよ! お前……呪いを受けたんじゃないのかい? 一度だけ似た呪いを受ける瞬間を見たことがあるんだよ。規模は比べものにならないぐらい小さいものだったけどね。それで……ステータスには何かなかったかい?」
マズいな。マドリーさんが怨念系の呪いを知っているとは。
この世界で呪いという概念は広く知られているが、その詳細を知っているものはほとんどいない。今回使われた呪いは怨念系と呼ばれ、呪いの中でも発動が難しく威力が強い。術者の命と引き換えに発動するケースがほとんどのため、滅多にお目にかかることがない呪いである。
「はい。何もありませんでした」
「……まあ、言いたくないならいいさ。それで、なんという職業になったんだい? それは規則だから正直に答えてもらうよ」
俺は呪いについては隠すことにした。
この称号名が問題だ。『太陽の女神に仇なす者』これがバレれば完全に太陽教と敵対することになる。今の状況では、それだけは絶対に避けないと。あの狂信者ども相手に、レベル1でしかも子供の身体。ハンデがありすぎて全く勝負にならない。
「えーと、職業は『
「収集家……いや、初めて聞く名だね。あれだけ禍々しい光を放っていたのに、意外と普通の職業っぽい。まさか、嘘をついてるんじゃないだろうね?」
ルークは首を横にブンブンと振る。
実はステータスの情報については、鑑定系のスキルやアイテムを使うしか確認できないのだ。それらはとても希少なため、こんな田舎町にはない。
つまり、ここで嘘をついてもバレることはない。しかし、職業を偽ると今後もスキルを偽装したりと生活が困難になるため、職業とスキルについてはきちんと報告しておいた方が良いのだ。
こうしてマドリーに、職業とスキルを教え解放されたのであった。
「ルーク。収集家がどんな職業なのかはお父さんは知らないけど、これはルークに適した職業であることは間違いない。自信を持っていいんだからな」
「そうよ。ちょっとびっくりしたけど、誰も知らない職業なんてルークらしいわよ。よかったわね。フフフフ」
「お兄ちゃん、あとでスキル見せて! ねぇ。いいでしょう?」
この家族はルークが幼い頃から奇想天外な行動を取っていたため、今更これぐらいの出来事に動揺することはなかった。
そして今回の出来事は、すぐに町中に知れ渡ることになった。しかし、こんな小さな町で2人の英雄職が誕生したことにより、ルークの異様な出来事はすぐに忘れられていくのであった。
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