12月 世界で一番
「理玖の来年の目標ってなに?」
真輝にそう聞かれたのは、夕飯の後にコタツでスマートフォンをいじっている時だった。俺の反対側で寝転がって、真輝もスマートフォンをいじってゲームに励んでいるようだった。
「目標? 目標なあ」
俺はスマートフォンの画面を消して、つい考え込んでしまう。見上げた天井の白さが、未来の真っ白さと重なった。
「特にないかな。風邪ひかないように健康に、仕事行って、帰って、寝て、たまに体動かして……」
「あはは、おじいちゃんみたい」
真輝の朗らかな笑いがあたりに響く。俺はちょっと拗ねて、「じゃあ真輝には、どんな立派な目標があるんだよ」と聞いてみた。
「俺はあるよ。理玖と一緒にいること」
恥ずかしげもなく言い切った真輝に、俺は思わず吹き出した。「それはもう、心配ないだろ」と応えるも、「そんなことない」と否定されてしまう。
「俺はいつだって、理玖がいるのを当たり前だとは思ってないよ。来年も、再来年も、この先もずっと一緒にいてもらえるように、俺は頑張る」
「……それを言ったら、」
それを言ったら、俺だって。
「だったら俺も、ずっと一緒にいてもらえるように、真輝のこともっと大事にするわ」
コタツの向こうの真輝の表情はわからない。けれども、「ありがとう」とつぶやいた真輝は、きっと世界で一番優しい顔をしていた。
世界で一番優しい人に、世界で一番優しくすること。
俺の来年の目標は、どうやらそういうことに決まりそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます