12月 世界で一番

「理玖の来年の目標ってなに?」



 真輝にそう聞かれたのは、夕飯の後にコタツでスマートフォンをいじっている時だった。俺の反対側で寝転がって、真輝もスマートフォンをいじってゲームに励んでいるようだった。



「目標? 目標なあ」



 俺はスマートフォンの画面を消して、つい考え込んでしまう。見上げた天井の白さが、未来の真っ白さと重なった。



「特にないかな。風邪ひかないように健康に、仕事行って、帰って、寝て、たまに体動かして……」

「あはは、おじいちゃんみたい」



 真輝の朗らかな笑いがあたりに響く。俺はちょっと拗ねて、「じゃあ真輝には、どんな立派な目標があるんだよ」と聞いてみた。




「俺はあるよ。理玖と一緒にいること」



 恥ずかしげもなく言い切った真輝に、俺は思わず吹き出した。「それはもう、心配ないだろ」と応えるも、「そんなことない」と否定されてしまう。



「俺はいつだって、理玖がいるのを当たり前だとは思ってないよ。来年も、再来年も、この先もずっと一緒にいてもらえるように、俺は頑張る」



「……それを言ったら、」



 それを言ったら、俺だって。



「だったら俺も、ずっと一緒にいてもらえるように、真輝のこともっと大事にするわ」



 コタツの向こうの真輝の表情はわからない。けれども、「ありがとう」とつぶやいた真輝は、きっと世界で一番優しい顔をしていた。



 世界で一番優しい人に、世界で一番優しくすること。



 俺の来年の目標は、どうやらそういうことに決まりそうだった。

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