気が弱い私は罰ゲームと勘違いした彼と3ヶ月間だけ付き合うことになりました

とみっしぇる

ナツキ㊤

ナツキです。高2の17歳。Dカップ。


ギャル風だけど、根はマジメ。むしろ、一人になると気は弱い。


少し派手なのは、大切な友達の影響。


中1のとき、バレー部の先輩にいじめられそうになった。


そんとき、助けてくれたのが、目の前にいるカリナとヨーコ。


小学校から同じでも、接点少なめだった。2人はギャル予備軍だったしね。


けど、ピンチから救ってくれた。


それから仲良くなって、3人でつるんでる。髪少しだけ染めて、うっすらメイクしてね。


あんなバレー部なんかやめた。


高校も3人一緒。可も不可もない中堅校。毎日が楽しい。


今、9月24日の放課後。教室でババ抜きの真っ最中。


「負けたやつが、最初に本命に告白すんだぞ」


ヨーコがプレッシャーをかけてくる。


さっき、3人でコイバナしてたら、カリナが好きな人いるって宣言した。


釣られてヨーコ、私も男の子の名前言った。


私にも、すごく気になる人はいる。高2になって仲いい。


なんだか最近は、向こうの好感度も上がっている・・と思う。


で、私はひらめいた。


自分の勇気づけ8割、友達の後押し2割。そんな気分で、ババ抜きで負けた人から順に告白を提案した訳。


さてトランプ。


「ヨーコに続いて、こっちも揃った。ナツキの負けね」

「げ~」


私が、最初の告白挑戦権を手にしてしまった。


「佐川海に告白すんだな、ナツキ」

「ヨーコ、ウミじゃなくてカイ君だよ。完全にウミで覚えたね」


「罰ゲームとかペナルティじゃないから、無理しないで。男子がまだ苦手なら、やめてもいいよ・・」


カリナが、優しく言ってくれる。


実は中学の時のバレー部トラブル、男子が原因。


私、カリナとヨーコほどじゃないけど、まずまずの顔だと思う。


当時、私に部の2年の先輩男子がアプローチしてきた。

ガツガツしてて怖いし、断ってた。


ところが、ソイツに気があったバレー部の先輩女子が、私を目の敵にしたのだよ。


バレー部のクソヤロウは、助けてくれなかった。


私は体育館裏で先輩女子4人に囲まれた。完全にビビって、何も言えなかった。


そこ通りかかったのが現在の親友2人。カリナが兄ちゃん召喚。ヨーコが先輩女子を蹴って、助けてくれた。


カリナの兄ちゃんは、先輩ボコって釘刺してくれた。


けど、それから、男ですっ!て感じの子が苦手なんよ。


最近は知らない男子に、育った胸を見られるのも、何だか嫌だ。



告白する相手はカイ君。


帰り支度しながら、虚勢を張った。


「告白のこと言い出したの私だし、明日、カイ君と一緒に屋上行く」


「がんばってな~」

「お、おう、骨は拾ってくれ、ヨーコ」


なんて弱気な私。


「ホントに大丈夫、ナツキ」


「大丈夫カリナ。ババ抜きで負けた私の罰ゲーム。と思って、一気に告白するから!」


大きい声出した。とにかく勢いよくカイ君に想いを伝えたい。


3人の先頭に立って、バーンと教室の扉を開けた。


「・・・・」


最悪だ・・


目の前にはカイ君がいた。


「・・罰ゲーム?」って呟いてる。


色白で、相変わらず優しい目をしてる。


カイ君。18歳。


本当は歳はいっこ上。去年、大きな病気の手術してダブった。


成績まずまずの私。4月に席が隣になった縁で色々と教えてあげて、繋がりがある。


カイ君は、166センチで私と7センチしか変わんない。


長い闘病生活のせいで、線が細くて色白。ちょっと童顔で中性的。


怖くない。


色々と気遣ってくれるし、根が明るい。勉強も追い付いてきて、かなり頭もいい。


彼女がいたこともないそうだ。


私が苦手になった男性ホルモン全開のタイプじゃない。


久々に男子と話して、楽しいと思う。



「え、え~と、忘れ物を取りに来て・・」


苦笑いの中に、微妙な空気が漂ってる。


かなり悪いタイミング。罰ゲームのキーワードも耳に入ってた。


私がやるべきことはひとつ。


「ごめんカイ君、こっち来て」


カリナとヨーコには、先に帰ってもらった。


そして、空いた教室に再び入った。


彼に聞こえた、最悪ワードのこと話さないと。


『罰ゲーム』


私は、教室の後ろの隅で、必死に弁解してる。


自己弁護じゃない。


明日に予定してた告白は、罰ゲームからの流れだと思われているだろう。


今さら、かなり期待してたなんて言えない。


ここでカイ君に軽蔑されても、仕方ない。



ただ、絶対に、絶対に、なにがあっても・・


友達2人の悪評だけは、立たせてはならない。


カリナとヨーコは、いずれは好きな人に告白してたと思う。


トランプに付き合ってくれたのは、勇気が足りなくて、勢いが欲しい私のため。


こんな話が広まって、本命男子に誤解されたら最悪だ。


昔、私を助けてくれた2人。


私のせいで迷惑をかけたなんて、あってはならない。


「トランプからの告白は、カリナとヨーコの本気の告白を後押ししようとしたの。2人は悪くないの」


「あ、あっと・・ナツキちゃん」


「責任は私にあります。カイ君お願いします。黙っていて下さい」


私は頭を下げた。


沈黙が続いた。彼はなにも言ってくれない。


涙がにじんできた。


「顔あげてよ、ナツキちゃん」


「・・」


私の目を見て、ハンカチを出してくれた。


「泣かなくていいよ。・・それよか、さっきの話だけど」


「どれかな?」



「罰ゲームとセットの、告白の方・・」


「あっ・・」


赤面してしまった。


友達の名誉を守ることに必死だったけど、私・・


カイ君に告白するって言った。


ホントは、すごい臆病なくせに。


「告白の方は、まだ有効かな」


「え?・・はいはいはい!」


「ルールは分からないけど、友達2人には告白成功って伝えてよ。それで・・3ヶ月付き合ってよ」


胸が痛い。


彼は、彼女ができると期待してなかったから、こんな形でいいそうだ。


本当は、違うと思う。


私と友達2人に、気を使ってくれてる。


だって次の日、カリナとヨーコに言ってくれた。


「ナツキちゃんが、俺なんかに告白してくれるって聞こえてきて、舞い上がっちゃった」


ヨーコが、牽制を入れた。カイ君は、最後の告白って言葉だけ聞こえたって言ってくれた。



前より距離が近くなると、カイ君は優しいだけじゃないことが分かった。


自分のハンデのことで弱音を吐かない。


一緒に勉強してても、必死に頑張ってる。



こんな人に、誤解されちゃったんだ・・




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