episode14 正体〜判明〜

黒い封筒を見た私は急いで屋上へ向かった


ついに笹浪さんに会えるのと

正体が知れる…!!!


その気持ちでいっぱいだった


息を切らして屋上へ着いた私は笹浪さんらしき人を探した


『あれ?笹浪さんは??笹浪さん!来ました!!

どこにいるんですか!!!』


必死で目一杯叫んだと思う


『笹浪さん!!!!!』


1番の大声を出した

普段の私は大声を出さないのだ


『どこにいるんですか!!返事してください!!!お礼も言いたいのに!!!!』


自分でもびっくりするほど叫んだ


『笹浪さん!!!!!』


もう居ないのかな

やっぱりデマだったのか?

笹浪さんは架空の人物だったのか?


『笹浪さんなんて架空の人物だよね…ここにいるのありえないし…帰ろ…』


その時だった

「汲田さん!」


どこかで聞き覚えのある声だった


『…?』


「汲田さん」


『近藤くん…?なんでここにいるの?

え?なんで?』


近藤くんが後ろにいた


なんでだ?


近藤くんも一緒に笹浪さんに呼ばれたのか?


『何かあった…?』


恐る恐る聞いた。


「いいえ、汲田さんにお会いするために呼んだんです」


『呼んだとはなんだ』


「先程黒い封筒を渡しましたよね?

屋上へ呼んだのは…」





「俺です」





一瞬時が止まった

何言ってるのか分からなかった

近藤くんが何か頭おかしくなったんじゃないのかと疑った


なんか変な物でも食べたのではないか

頭いかれたのではないのかと思った



『…………………は???』



必死に絞り出した言葉が一文字しか出なかった



「俺が汲田さんを屋上へ呼びました、

俺が笹浪です」





『…………は?』



近藤くん何を言っているの?



『君は何を言っているの?・・・だって笹浪さんはこんな所いるわけないだろ』



「居ます、汲田さんの目の前に」



『だからそれが訳分からないんだってば』


「そう思いますよね、汲田さんならそう言うと思っていました」



『意味わからん・・・』


私は混乱とパニックでいっぱいだった。

今まで話していた笹浪さんが、近藤くんだったから


「汲田さんのために、俺たくさん力になりたくて、笹浪という人物を作ったんです」



『なんで笹浪さんだと偽って私に声掛けたん?』


近藤くんは一瞬黙りこみ、口を開いた


「それは・・・


俺が・・・


汲田さんのことを好きだったからです」


私のことを好き・・・??

社内でもモテモテで御局様達からも可愛がられて

美人系な同僚達からもキャーキャー言われているのに?



私を好きになんてなる?



『そんなわけない、私を好きだなんてそんなデタラメやめてよ笑』




「デタラメなんかじゃない!!!!」




まじだったんだ


こんな女として背が高くて、取引先の男社員からメールで

”背が大きくて悲しかったです”

って言われたり


中々可愛い女子として見られないルックスと

身長と格好と可愛げ無い性格と人当たりの悪さ



こんな私のどこを好きになる?



私は女という性別を付けた大男みたいな女だよ?



細くもないし華奢でもない

モデル体型でもない。むしろ足太いし体も大きいからよく男と間違われる


そんな女のどこに惚れた?




『なんで?なんで私を好きになった・・・?』




彼は黙る




『汲田さんの優しい心を好きになったんです。

それから汲田さんの全てが好きになっていたんです。あの研修の時、水を渡してくれましたよね?

周りの人は無視して去っていく人がいるのに

その中で汲田さんだけは見つけてくれた。


この人は素敵な人だ、心の優しい綺麗な人なんだって思ったんです』




あの時の私は普通に水を渡した

何も考えてなかった

下心も無かった



近藤くんはこの出来事を覚えていてくれてたんだ


私は忘れていたのに

日常の一部だと思っていただけだったのに



近藤くんはずっとずーーーっと

この出来事を覚えていたんだ



まるで真緒と出会った時の私みたい


『ありがとう・・・あの時のこと覚えていてくれて

私なんて大したことないってそんなに覚えてなかった』



「良いんです、だって汲田さん、最近まで

大塚商社の小森さん好きだったんでしょ・・・?」



『なんでそれを知ってるんだ!!!!!!』



「勝手に知ったという訳でもなくて・・・その・・・

えっとー・・・半年前に小森さんが結婚するという話が社内で広がった際、汲田さんの顔が曇っていました」



その時、真緒の結婚の話が受け入れられなかった時の出来事だ・・・バレてたんだ



「そして何より、社内に小森さんがよく来社する度に汲田さんとても素敵な綺麗な美しい可愛い笑顔を向けていたんですから



僕にも見せて欲しい笑顔でした」




近藤くんも同じこと思っていたんだね


「汲田さんが小森さんのことを本気で好きと分かって、俺は悲しかった・・・

たくさん泣いた・・・汲田さんのことを俺ならもっと幸せにできるのにって・・・!!!!!

それすら出来ない俺は男として最低だ!!!!!って思って毎日苦しんでいました」



近藤くんがそんな想いを私に向けていたなんて

知らなかった

真緒思っていた気持ちと同じだ



近藤くんは私のこと本当に好きだったんだ



「汲田さん、社内ではフランクに色んな社員に話しかけたり、仕事を楽しくしていたり、大人しいけど明るい、そんな汲田さんを本気で幸せにしたい、彼女になってくれたら俺は幸せなんだろうなって毎日思っていました」




こんな男みたいな私をここまで好きになってくれる人が居たんだ


















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