第33話 試験

 爺さんから借りた本と数日間格闘した後、魔導具の実際の作成を試みる。まずは、光属性魔法の魔導具化だ。光安定性試験に使用する遮光箱を改良したい。教本によると出力点は水晶を使用すれば良いらしい。水晶はここの付近ではピレネ村でよく採取されているという。陶石が取れるあの村だ。石英と陶石は鉱物の系統が近いので、採取場所も似通うのだろう。

「遮光箱を作りたいのですが、魔導インク・金属板など材料がありません。貸してもらえますか?」

「この作業部屋にあるものは使っても構わん。好きに使え。足りないものは言え」

 案外太っ腹なパラケル爺さんだ。断って作業を始める。

 水晶を留めた光魔法の魔導盤を箱の裏側に設置する。この魔導盤は教本通りだ。箱の横に小さな穴を開けたのち、薄い金属板を這わせて表の制御盤に這わせる。魔導回路として作用させるための下地だ。表の制御盤には魔石を置いた時に開始できるように作成する。表の制御盤も教本通りに作成する。発光量は太陽光の10倍を設定する。試運転のポーション瓶の劣化で、自分の魔力と同程度の出力が出ているのを確認できたので間違いないだろう。教本通りに作成すると、確かに道具と素材が揃えば、教本を頼りに簡便に作成することが可能だ。教本は思ったよりわかりやすい。


 稼働時間は表の制御盤で操作する。表の制御盤は、教本通りだと魔素源の魔石部分とタイマー部分が同じ回路中で扱いづらい。これは改良が必要だろう。回路を別系統とするため制御盤を分割する。タイマーユニットと魔石ユニットとに機能を分け、切り離した。一つの機能パーツとして金属をカード化する。組み合わせて汎用できるように改造する。組み合わせパズルを思い出したのだ。3連の続きとしてパチンとはめる。はめたら発光のスタートだ。魔石カードを外すとリセットされる。タイマーユニットを1時間。10時間、20時間用を作ってみた。爺さんに確認をとってみる。


「これが試験用の遮光箱か。なるほど。裏の魔導盤は教本どおりで表の制御盤を改良したのか。役割の要素ごとに分解して、それぞれを組み合わせるようにしたようだな」

「それぞれをパーツ化してはまることで組み替えができると思いまして」

「この仕組みはもう少し複雑にしたら考え方として売れそうだな。ずれないようにガラスのカバーをかけておけ。」

合格点をもらった。このまま試験は続行だ。


 爺さんによると、この程度の出力量では、低グレードの魔石1個でしばらく使用できるとのこと。光魔法単独だと100時間は使えるだろうとの予想していた。魔石のランクを上げることで、時間は増やせるが値段は高い。魔石は魔物から入手が可能なので、産地である城郭都市近辺では安く入手が可能だ。10個ほど爺さんからもらう。これでしばらく試験を継続できる。一日10回使用することにして10日間は使用できるだろう。


 試験を続行し、磁薄釉瓶の遮光性能は非常によく、劣化が確認できたのは80時間を超えたあたりだった。元のポーションを1として、40倍の保管期限が保つことができた。こちらの期限に合わせると品質期限3年のポーションが完成した。



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