怪異の力で生きる道

牧葉

第1話 希望から絶望。そして復讐へ

化け物』

私、鬼咲きさき夜鈴よすずは昔からそういわれてきた。その原因は私の左目。私の眼には生まれつき『鬼』という字があった。ただそれだけ。それだけで親から捨てられ、孤児院の人達からは迫害されてきた。だけど私が12歳になってすぐ、急に私を引き取るという人が現れた。神代かみしろ天智てんち凛花りんかと名乗る、まだ20代くらいの若い夫婦だった。どうやら2人は数日前に孤児院の近くを通り、柵の外から私の怪我だらけの身体を見たらしい。私は、今日から神代家の養子になる。どうせ今までと変わらない日々を送るだけだ。


「ね凛花ぇ」


神代家に向かう車の中で急に凛花さんが話しかけてきた。なにか気に障ることしたかな。


「帰凛花ったらまずはお風呂入ろっか!」


「えっ?」


凛花さんから出てきた言葉はあまりにも予想外で驚いてしまった。


「なんで……?」


「だ凛花って夜鈴ちゃん、髪ボサボサだよ?」


……確かに孤児院にいる時、お風呂に入るのは1週間に1回とかだったけど。


「……怖くないの?気持ち悪くないの?」


「何凛花が?」


「この……おかしな眼」


「眼凛花?」


私がそういって左目にかかってる髪を上げた。そうすると凛花さんは「えっ!?」と驚いた。

そうだよね。こんなの、気持ち悪いに決まってる。


「す凛花、すごいね!?この眼!?どうなってるの!?」


すごい?この眼が?私を12年も苦しめて絶望に陥れたこの眼が?


「なん……で」


気付いたら涙が出ていた。


「……私凛花はね、昔から誰に対しても差別をしないようにって教えられててね」


「だ凛花から、夜鈴ちゃんのその眼も気持ち悪いだなんて思わないよ」


「そ天智うだよ」


天智さんが車の運転をしながらそういった。


「僕天智達はどんなことがあったとしても夜鈴ちゃんを気持ち悪いとは思わないし嫌いになんてならない」


そんなことを言われ、家に着くまでずっと泣いた。16時から18時くらいまでずっと。


「さ凛花!一緒にお風呂入ろっか!」


「ん?」


家に着いて直ぐ凛花さんがそう言った。聞き間違えかな?『一緒に』って言った?


「い、いや!1人で大丈夫です!!」


「遠凛花慮しないで!ほら!」


やばい。この人ほんとに一緒に入る気だ!


「私!1人で入れるよ!」


「え凛花ー!一緒に入ろーよー!」


この人、私より歳上だよね?


「凛天智花。夜鈴ちゃん1人で入りたいって。」


「え凛花ー!」


天智さんは、ぷーと頬を膨らました凛花さんを宥めながら私にお風呂がどこにあるか教えてくれた。なんか……この2人、夫婦っていうよりは兄妹って感じがすごい。


「えっと……お風呂入ってきます!」


そう言って私は小走りでお風呂に向かった。髪と身体を洗って湯船に浸かった。「ふぅー」とため息を吐いて今日のことを考えた。ずっと迫害されてきた孤児院から天智さんと凛花さんが引き取ってくれた。………初めは……この人達も、私の両親や孤児院の人達と同じように私のことを殴ったり暴言を吐くんだろうと思っていた。だけど……凛花さん達は私の眼は気持ち悪くないと、私のことを嫌わないと、そう言ってくれた。あの2人は他の人達とは違う。………………のぼせてきた。もうそろそろ上がろっかな。


「あ凛花!上がってきた!」


「っ凛花て!まだ髪濡れてるじゃん!ドライヤーで乾かそっか!」


凛花さんに髪を乾かしてもらい夜ご飯を食べた。気付いたら22時頃で天智さんが「もう寝ようか」と言い、部屋のベッドが2人分しかなかったので今日は凛花さんと寝た。




















あれから3年経った。天智さん達は近くの中学校に通わせてくれた。そして、私も15歳。来週から高校生になる。そしてなんと今日は!天智さんの誕生日!ってことで家の近くにあるお店で誕生日プレゼントを買いに来たんだけど………何がいいのかな?


「……てぐら?」


偶然、そんな名前の骨董屋が眼に入った。入ってみると、お店の中にいたのは店主っぽい80代くらいのお爺さんただ1人。ぐるっとお店を見渡してみると1つ気になるものがあった。眼の形の木の板に黄泉と書かれたペンダント。


「おお爺さんや、お嬢さん。そのペンダント気に入ったのかい?」


「…は、はい」


気付いたら私はそのペンダントを買っていた。

…………これ…誕生日プレゼント……?

取り敢えず帰ってみよ。


(ほんとにこれで良いのかな?)


そう思いながら家に帰っていると家の近くに人が何人か集まっていた。何かあったのかと思って走ってみると、





家が……………燃えていた。


「は?」


何で?

いや、天智さんと凛花さんは家の中に居ないかも……。集まっている人達の声を聴くと火事の原因は「放火だ」とか「不注意で起こった事故だ」とかそんなことを言っていた。凛花さん達は絶対に火事なんか起こさない。ってそんなことを考えてる暇じゃない!2人がどうなってるか確認しないと!


「あ近所の人:田村!夜鈴ちゃん!?」


「!!」


急いで家に入るとリビングに人影が見えた。よかった!靴を履いたまま走ってリビングに入ると……大火傷を負っていた上2人ともとんでもない怪我をして血が流れ続けている。


「夜凛花……鈴ちゃ……ん」


「っ!凛花さん!」


凛花さん…まだ生きてる!天智さんも生きてるかも!早く家から出ないと!


「は凛花やく…逃げて……!」


ばたっと急に凛花さんの腕から力が抜けた。


「え?」


「夜田村鈴ちゃん!」


「な田村っ!」


「…天智さんを外へ出して下さい!!」


「わ田村、分かった!」


凛花さんもまだ意識はある!2人を家の外に出さないと!


「2人を近くの病院にお願いします!」


全員が家から出た後、凛花さん達を病院に送ってもらうようにして直ぐ、身体に火が着かないように水を被って家の中に戻った。凛花さん達が事故を起こすとは考えにくい。そうすると考えられるのは『放火』。2人は火傷以外の怪我もしていた。つまり、狙って攻撃した人物が居る!


「!」


そうだ!最初に家に入った時に見えたリビングの人影!あの人影は……立ってた!天智さんも凛花さんも怪我をして倒れていた。


「!また……人影が!」


さっきと同じように走ってリビングに入ると……今度は………しっかりいた。黒く長い髪に白い和服?を着ている女で……なんとも言えない恐怖を感じる。


「…???…?」


そいつは、私に気付いたようで睨み付けられた。


「あ………。」


ダメだ。……これに………この存在に手を出してはいけない。攻撃でもしようものなら……一瞬で殺される。あれは……人間ではない。…そう……本能で感じる。そ…れ……でも…!恩人を傷付けたこいつを許せない!そう思った瞬間目の前に『鬼』の字が現れた。何がなんだか分からずにいると、急に見ていた景色が変わった。


「……駅……?」


駅名を見てみるとそこに書かれていたのは……


「っ!ここは!?」


ここの駅名は『きさらぎ駅』

有名な…都市伝説だ。中学の頃オカルト好きの友達に聞いたことがある。でも……何で急に…。そうやって暫く呆けていたけど、「パリンっ」という音がなって元の景色に戻った。


「あっ!」


リビングを見渡してみると彼奴が居ない!裏口も開いてない。何処に…!?


「ゴホッ」


煙が……!一回外に出ないと……!


「っ!」


身体が………動かない……!?身体に力が入らない。

な…んで…。やばい……!このままだと………死ぬ…!目が…霞んできた。も…う…。






「!」


白い壁……。


「病……院…?」


目が覚めるとそこは病院だった。


「夜田村鈴ちゃん……。」


ベッドの横には田村さんがいた。田村さんが助けてくれたのかな?


「そうだ!田村さん!天智さんと凛花さんは!」


「え田村っと……2人は……」


その反応で、分かってしまった。死んで……しまった。たった3年。でも、その3年間ほんとの両親より愛してくれた。この世で最も大切な人達が……死んだ。


「と田村んでもない火傷と怪我の出血が酷くて……」


涙が、溢れてくる。


「あ、あ" ぁぁぁあ"」


嗚咽が漏れる。この世界から色が消えたように感じる。



3年前とは違う、絶望の涙が止まるまで数時間かかった。その間田村さんは一緒にいてくれた。


「田村さん。お願いがあります。」


それから1週間経って退院した後、田村さんに1つのお願いをした。田村さんはそのお願いをを聞き入れてくれた。私は田村さんに、家に連れていってもらった。家に着いてすぐに1人にしてもらった。家は殆どが燃え尽きていた。家の前にはあの骨董屋のお爺さんがいた。


「イお爺さんザナミがきおったか」


……イザナミ?いや!お爺さんは何か知ってるの!?


「あの!お爺さん!!」


「んお爺さん?お嬢さんは……」


「そお爺さんういうことか」


「お爺さんはここで起きたこと何か知ってるんですか!?」


「あお爺さんあ、知っとるよ」


「お願いします!知ってることを全部教えて下さい!」


さっき言ってた『イザナミ』と『そういうことか』という言葉、お爺さんは私が分からないことを知ってる。


「何お爺さん故、お嬢さんはそんなことを知りたいんだい?」


その言葉を聞いた瞬間、2人が死んだことを知った時の絶望と………殺した奴への怒りが混み上がった。


「殺したいんです。……私の大切な人を殺した奴を」


「いお爺さんいじゃろう。教えてやろう。その」


「左お爺さん目のこともな」

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