第3話

樹は気になる美咲の慌ただしさを忘れられず、彼女に会いたいという気持ちが強くなっていった。彼は彼女のことを考えるあまり、自分でも驚くほど集中できない日々が続いた。


 そして、ある日、美咲からの連絡が届いた。彼女は彼に会いたいという内容のメッセージを残していた。樹は一息つき、すぐに会いに行くことを決意した。


 美咲のアトリエに到着すると、彼女は笑顔で彼を迎えた。しかし、樹は彼女の目に何かを感じ取り、少し心配そうな表情を見せた。


「樹、ごめんね。前回の時、急に出かけなきゃいけない仕事があったの。でも、それは実は…」


 美咲は少し緊張した様子で言葉を続けようとしたが、樹は彼女の手を取り、優しく微笑んだ。


「大丈夫、急な仕事だってわかってるよ。でも、何か気になることがあって…」


 美咲は戸惑った表情で樹を見つめたが、彼は優しく続けた。


「君のことが気になってたんだ。もしかしたら気のせいかもしれないけど、何か隠しているような感じがしてさ。」


 美咲は驚きと同時に、樹の理解に涙ぐんだ。彼女は深呼吸をし、胸の内を告白し始めた。


「実は…私、イラストレーターとして成功を収めたように見えるかもしれないけど、最近、自信を失っていたの。仕事のプレッシャーや、自分の限界を感じて…」


 美咲は遠くを見つめながら言葉を続けた。彼女の内面の葛藤や不安が少しずつ明らかになり、樹は彼女の弱さと真実を受け入れた。


「君がどんな時も素敵なイラストを描いていること、それが君の強さだよ。俺は君のことを信じてるし、君の作品が好きなんだ。」


 樹の言葉が美咲の心に届き、彼女は胸の内を打ち明けることで軽くなった気持ちを感じた。そして、二人の距離が一段と近くなった瞬間だった。


 美咲と樹はお互いの弱さを受け入れ合い、そしてお互いを支え合うことを誓った。すれ違いや不安も乗り越え、二人の愛はより深まっていくのだった。


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すれ違いの恋 色野あにまる @Kozan

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