第24話 そして、始まる

 お菓子まで一通り食べ終え、ミリエラはふと疑問に思った。


「どしたのーミリエラちゃん、ぼーっとして」


 セラが覗き込んでくる。

 屈託なく接してくる彼女には心の鍵を緩める力があるようで、ミリエラはぽつりと呟く。


「お二人は、私の目の色が気にならないんですか……?」

「え、どーして?」


 セラは純粋に疑問と言う顔をする。

 そこでぴょこぴょこと近づいてきたミリスが横からくっつく。その様子はじゃれつくペットのよう。


「魔術の歴史はね~、時の支配者が書き換え続けてきたんだよ~。特に禁忌とかは都合よく決められたりするから~」

「それにっ」


 二人が目を見合わせる。


「ミリエラちゃんはやさしー人って知ってるから☆」

「ミリエラさんのやさしさはもう知ってるから~」


 と、声を合わせた。


「そ、そうでしょうか……?」


 ミリエラは目をパチクリとする。

 確かにこの一週間、二人とは毎日通話をしていた。

 王都での任務の都合上、映像は映せなかったが、他愛のない話をよくした。


「ミリエラちゃん、いつもあたしたちの話を楽しそうに聞いてくれてたもんね」

「王都の仕組みもいっぱい話せたの、楽しかった~」

「あら、私はいつも楽しそうに聞いていないかしら?」


 リーファがちょっとむくれる。


「あぁっ違うんだよーっ! リーファちゃんは『あらあら』って感じでちょっとお母さんっぽいんだけど、ミリエラちゃんは『うんうんっ』って感じでよりお姉ちゃんっぽいって言うか! その……方向性の違いだよっ」

「お……お母さん……ついに姉から母に……?」


 しなしなとへたり込むリーファに、「言葉ってむずかしーっ!」と言いながら駆け寄るセラ。

 その隙にミリスがぎゅっと寄る。


「わたしたち二人もね~、昔いわれのない事で迫害されたことがあるから~。ミリエラさんの目も、自分のせいじゃない、でしょ?」

「そ、それは……そうですね」

「ならわたしたちは、自分が見ているミリエラさんを信じるよ~」


 にぱ、と笑ってみせるミリス。嬉しくてつい彼女を抱きしめてしまった。


「ミリスさん……っ」

「む。わたし十三だよ~? さん付けはもうだめ~」

「そうですか? じゃあ、み、ミリス……」

「えへ」


 それを耳ざとく聞きつけたセラがびゅーんっと飛んでくる。


「ずるい! あたしも歳下だから呼び捨てで呼んで!」

「え、じゃあ、その。セラ……」

「わーい!」


(ちょっと照れくさい……)


 ミリエラが顔を赤らめていると、リーファが仕切り直すように手を叩く。


「さて、そろそろ話を聞こうかしら?」

「あ、うんっ」

「わかった~」


 二人が席につく。扉に何らかの魔術を掛けたリーファが再度席に戻ると、


「えっと、結論からゆーとね」


 セラが真面目な表情で言う。


「王都、ちょっとヤバいかも」

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