声の無い物語

野村アルモン

第1話

今日もまたいつものように帰る。

毎日変わらない日々を過ごしているとこのままずっと何も楽しくないまま人生を終えるのだろうかと考える。

仕事は大変だが特に大きな不満はなく、人間関係も悪くはない。

お金もたまに贅沢する程の稼ぎと蓄えはある。これといった趣味は無いし、結婚はしていない。

寂しいと感じるが、する気もない。

負け犬の遠吠えかと思われるかもしれないがしたいとは思わない。

まぁ、してくれる相手もいないのだが。そんなことを思いながら帰り道を歩いているとスマホの通知音が鳴る。そのまま歩きながら左のポケットに入っているスマホを取り出して画面を確認する。

そこには見慣れないタイトルにアイコンとこんな文字が写っている。

『玲奈さんからメッセージが届きました。』

なんだこれ。思わず立ち止まる。

こんなアプリを入れた覚えは無いし玲奈さんて誰なんだ。

そう思いながら通知をスライドして中身を確認してみる。

数秒の黒いロード画面が流れた後SNSのDMの画面のようなものが現れた。そこにはさっきの通知を送ってきた玲奈という人物と思われるプロフィール写真のアイコンとメッセージが表示されていた。

『今どこにいるの?こっちはもう着いたよ!』

状況が飲み込めず少し戸惑うが冷静にまずホーム画面に戻りアプリのタイトルをもう一度確認してみる。TORNADOESという知らない名前のアプリがホーム画面の右下の端っこに追加されている。

おそらくこれがさっきの通知のアプリだろう。ウイルスが入ったかスマホが乗っ取られたと不安になり動揺していると、またスマホの通知音が鳴ると同時にさっきの玲奈という人物からのメッセージのバナーがスマホ上部に表示される。

『玲奈さんからメッセージが届きました。』

『玲奈さんがスタンプを送りました。』

アプリに戻り確認してみる。

『先に店に入って待ってるね。』

可愛い兎のスタンプと共にメッセージが送られてきていた。

どうしよう。全く訳が分からずどうしたらいいか迷いながら、とりあえず明らかにこのアプリは怪しいので返信はせずに、証拠を残す為に削除はしないでおこう。

腕時計を見ると19時を過ぎており、辺りは真っ暗で冬ということもありとても寒かったので家に帰ってからどうするか考えることにした。

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声の無い物語 野村アルモン @nomuraarumon

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