【03】焼け残った日記②

その日の明朝、驚くべき知らせが早馬にて、もたらされた。

 ナッシュ・ロウが、あの恐るべき多頭蛇ヒュドラの討伐に成功したのだという。立ち会った者の話では、彼の戦いぶりは人成らざる者のそれであり、まさに伝説の勇者に双肩そうけんせし精強ぶりであったという。

 半信半疑のままでいると、日没の前にナッシュ・ロウと聖女が我が城館に帰還を果たす。

 すると、彼らは更に私を驚かせてくれた。何と“清らかなる聖女”が、その神秘の力をもって、穢れに満ちたガダス大湿原のすべてを浄化したのだという。それもたったの一日足らずで。これでもう、あの多頭蛇ヒュドラのような化け物が生まれる事はない。

 私はこの日から“清らかなる聖女サマラ”への崇拝に目覚める事となった。

 私の聖女への思いは敬虔けいけんなる信仰であり、その海よりも深く広大な慈愛への感謝の念である。

 彼女こそ、この世の理を統べる女神が現世に顕現けんげんした御姿であり、何人なんぴとたりとも汚す事の許されない神聖であろう。

 聖女サマラの存在と向き合うだけで、私は心の穢れが浄化されて行くのを感じていた。

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