【01】焼け残った日記①
ナッシュ・ロウという若者に連れられて聖女が我が城館へ訪ねてきた事を、補佐官のプレラッティから聞き、謁見室にて二人と面会する。
聖女は如何にも清楚で純朴といった印象であったが、対するナッシュは不遜で尊大な言動が鼻についた。話を聞けばシュトロムの港にある我が船を、世界救済のために貸せという。
彼が“女神の選定”によって選ばれた勇者であるという評判は聞き及んでいた。先月の始めに西の峠で人喰いトロールを討伐したという噂も耳にしていた。
しかし、彼の傍若無人ぶりを見るに、勇者の資質を疑わざるを得ない。そこで私は
その試練とは、船と引き換えに、昨今ガダス大湿原に出没している
それが出来ぬのであれば、聖女と引き換えに船を貸す事を条件として加えた。
勇者が
よって、あのナッシュが
彼女に向けるのはあくまでも親愛と敬意であり、ついに病弱なカトリーヌとの間に宿す事が叶わなかった我が子へ向けられたはずの、父の眼差しであったと断っておく。
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