泣きたい夜は君を想う
@komame-kurata
プロローグ
「ずっと前から好きでした」
聞きなれた、大好きな声が鼓膜を震わせる。何よりも欲しかった言葉が耳殻をなぞる。けれども、その言葉は、あたしに向けられたものではない。眼鏡の向こうの瞳に、あたしが映ることはない。
あたしはゆっくりと二人に背を向け、足音を立てないように歩き出す。涙が落ちる前に。胸はズキズキ痛かったけれど、いつまでもここにいる訳にはいかない。
前に、進まなきゃ。前に……
半年前、あたしたちは三人だった。いつまでも三人でいられると、無邪気に何の疑いもなく思っていた。この半年で、何もかもが変わってしまった。
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