ラノベ脳の物書きが、初心者運転を見かけました

ねこ沢ふたよ

第1話 見るからに初心者

 徒歩で買い物した帰り、狭めの路地で出会ったのは、紛うことなくその運転は、初心者。

 だった十メートルほどしか動いていないのに。その身のこなし、オーラから分かる。ペタペタと見やすい場所に貼っているのは、燦然と輝く初心者マーク。

 若葉の形の称号は、そなたに相応しい!


 ブレーキを踏む強さが分かっていないのか、ガクガクと揺れるコンパクトカー。

 右か左かまっすぐか。どこに行きたいのか、先の読めない動きに確信する。


 コイツに近づくのは、危険だ。


 不用意に近づくことは、死を意味する。

 最上級の魔物、それが初心者運転なのだ。


 もし、近づくならば瞬時に相手の真横しかくに入る身のこなしが求められるが、あいにく私はそんな運動神経は待ち合わせていない。


 大人しく降参して道を譲る。


 多少高くなった縁石の上。

 並の車相手ならば、万全な場所。

 だが、相手はビースト。これでも多少の不安が残る。


 ガクガクと不機嫌な動きで真横を通り過ぎる車。私も偉そうなことは言えない。

 きっと私も運転する側に回れば、こんな風に周囲に不安を与えているのだろう。

 そう、生暖かい目で車を見送れば、暴れ回る車を制御しようと必死な若者。

 そして、後部座席には、全てを達観したような悟った表情の老人が黙って座っていた。


 孫とドライブ……なのかな?


 老師がついているなら、きっと大丈夫。

 彼は、この暴れ車を乗りこなせる。


 安全運転、よろしくお願いいたします。

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