第15話 ギルド
The Second Lifeというゲームには、ギルドというシステムがある。
ギルド設立の条件は、
『攻略組』と呼ばれる最前線を征く者たちも、当然ギルドを設立し、協力し合って攻略を進めている。
そして6番目の街『シクス』にも、様々なギルドホームが乱立している。
その中でも一際目を引くギルドホームがある。
シクス城という安直な名前の城だ。本来ここは都市長や役人が詰めている城であり、1プレイヤーがどうこう出来る施設ではない。
それがシクス城を本拠地とするギルドの名称だ。
攻略組の中でも一つ抜きん出た実力を持つとされ、定員50名のところをわずか23人で構成している。
他の攻略組ギルドは基本的満員の50名か、そうでなくとも45名はいる。
しかし羅刹天は違う。少数ではあるが、1人ひとりが一騎当千の実力を持つとされる者たちだ。
さらにはその傘下に幾つかのギルドがあるとも言われており、人数以上の脅威と規模を有している。
攻略組ギルドは競うように先を新たな街や新たな情報を求める。
そんな中、羅刹天はどの分野でも最前線を走っていた。
*
6番目の街シクス、シクス城内会議室。
そこには羅刹天のメンバー23人が集まっていた。
「目処は立ったんだな、リーダー」
重々しい雰囲気の中で、1人の大男——否、
頭上には黒い文字で『ゴウ』。
「あぁ。情報収集は抜かりなくやった。知ってるとは思うが、エリアボスは
リーダーと呼ばれた男はそう答える。このゲームでの1番の有名人と言っても良い男。名はレオン。
「メンバーは? 全員で行くわけじゃないんでしょ」
今度は黒髪の美女がレオンに問う。
エリアボスは、挑む人数によって強さが変わる。だからただ頭数揃えれば良いということではない。
「まあそうだな。今回は特に、少数精鋭で行った方がいいと思う。具体的には、4人」
一瞬、会議室にざわめきが走る。しかしそれもすぐに消え失せる。
「4人は流石に少なすぎない? これまでだったら、最低でも8人はいたじゃない」
黒髪の美女——ミリナがここにいる者たちの声を代弁する。
「確かにこれまではそうしてきた。だが今回は訳が違う。情報によると、今回のボスが吐いてくる毒の霧には即死効果があり、毒に対する耐性があるか、高いレベルである必要があるみたいなんだ」
うーん、と誰かが唸り声を上げた。誰かはわからない。
「だから無闇に人数を増やして、水準に達しない奴がすぐにやられるというのは避けたい」
「納得ですね」
ここで初めて声を上げた初老に見える男。その頭上には白い字でガスポンドとある。
白い字。つまりはNPC。ギルドにはNPCも加入させることができるのだ。
しかしここではそれは問題ではない。それは他のギルドも良く行なっていることだ。
このガスポンドという男は、シクスという街の都市長なのだ。
都市長が羅刹天に協力し、さらには自らがその一員となっている。
「今日はそのメンバーを発表するために集まってもらった」
誰もが固唾を飲んで見守る。
「まずは、俺。異論があるならもちろん聞く」
声は上がらない。当然だ。
羅刹天のリーダー、レオン。レベルは32。『プレイヤー最高レベル』の称号が語る通り、セカライ最強の男として知られる。
「次にミリナ。異論は?」
今度も上がらない。
羅刹天サブリーダー、ミリナ。レベルは30。レオンと並ぶ、セカライ最強の女。
レオンとミリナがいるというだけで、他のギルドからすれば脅威。この2人は、正真正銘、最強コンビだ。
「そしてイグバル」
終始目を伏せている男、イグバル。レベルは24。レオンとミリナと比べれば格落ち感は否めないが、それでもプレイヤーの中ではトップクラスの強さがある。
取得している
「最後にカエラ」
羅刹天の元気印、とは誰が言い出したかわからない。メンバーかもしれないし、他のプレイヤーかもしれない。とにかく、そういう女だ。
レベルは26。ミリナに次ぐ高レベルである。
「異論は……ないようだな。ではこの4人でエリアボスの討伐に向かう。討伐が完了次第、順次情報共有を行い、すぐにみんなが討伐に向かえるようにする」
22人が納得して頷く。
「それに、10番目の街までは一直線だし名前に数字が入っていたが、11番目からはそれがない。いくつもの街に派生する。仕事量も増えるだろうから、気合を入れて頼むぞ」
これは公式から既に発表されている情報だ。
これまでは1番目の街から行けるのは2番目の街、といった具合だったが、10番目の街からは様々な街に行ける。何番目、という概念自体がなくなる。
「では、この場で何かを伝えたい者がいれば挙手をしてくれ」
手は上がらない。
「では、解散! 指名された3人は残ってくれ」
指名されなかった19人は散り散りになり、会議室から去っていった。
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