ムカデで始めるVRMMO〜どうやら俺、魔王って呼ばれてるらしい〜
ギンヌンガガプ
プロローグ
第1話 The Second Life
「遂にやってきた。この日が」
俺——
主にVRMMOを手掛ける最大手3社が手を取って、ひとつのタイトルを作ると発表されたのが5年前。
キャッチコピーは『2つ目の人生を、ファンタジーな世界で』というもの。
その名も『The Second Life』、通称してセカライ。
そんな超超大タイトルのリリースが、あと1分に迫っているのだ。
ソフトはすでに購入済み。食事もトイレも済ませて準備万端。
「3、2、1」
遂に時間だ。俺はヘッドギアを被り、VRの世界へ旅立った。
*
『ようこそ、The Second Lifeの世界へ』
出迎えてくれたのは、美しい女性のAIだった。
『これよりキャラメイクを行います。まずお名前を教えていただけますか?』
「ミナトで」
大抵のゲームで、俺は本名を使っている。本名っぽくないし、べつにいいよね。
『かしこまりました。ではミナト様、次に種族を選んでください』
セカライの醍醐味はここだ。
運営曰く、1000を遥かに超える種族数を用意しているとのことで、本当に何の種族にもなれるんだとか。
目の前に映し出されたウィンドウには、人間をはじめとしてさまざまな種族名が羅列される。
とはいえ、1000を超えるすべての種族が選択可能というわけではない。ここで自由に選択できる種族はせいぜい100程度で、スクロールしていった先にある『ランダム』を選択することで、残りの種族になれるチャンスが与えられる。
ランダムを選択すると本当に何になるかわからない。大抵は
とはいえ、だ。俺としては、ここにある100種の種族ではいまいち心が踊らない。
俺はゆっくりとスクロールを続け……
「あった」
『ランダム』ボタンに手を掛けた。
その刹那、眩い光が俺を包み——
「これ、ムカデ……だよね?」
俺はムカデとなった。
さっきのAIお姉さんが鏡を持ってきてくれる。
「うん。やっぱりムカデだわ」
とはいえ、俺の知るムカデとは少し違う。
他の足より太くて長い足が4本あり、これがおそらく人間で言うところの手足であろう。
そして人間で言うところの足によって、直立することが出来ている。二足歩行も可能だ。
気持ちの悪いムカデの裏側が正面からだと丸見えだ。
さらに言えばめちゃくちゃデカい。多分1メートルは超えている。
二足歩行する巨大ムカデ……悪夢だな。
ただ——
「心が踊ってる。過去にないくらい!」
正直言って最高だ。
この擁護しようのない気持ち悪さが最高だ。
鏡はさっさとしまっていただきたいところだが、これが自分なのかと思うと楽しみで仕方がない。
「さっすがセカライ! ムカデなんて種族もあるとは!」
『ミナト様の種族は
「せんちぴーとまん? 聞いたことないけど……まあいい。ステータス」
ミナトが『ステータス』と声に出すと、目の前にステータスが映し出されたウィンドウが表示される。
氏名:ミナト
種族:
レベル:1
HP:40/40
MP:100/100
筋力:100
防御:50
魔力:100
魔防:50
素早:500
器用:350
幸運:100
スキル:回避lv1、隠密lv1
種族スキル:炎脆弱lv5、超マルチタスク、精密動作lv1
称号:ユニーク個体
ふむふむ。色々と聞きたいことはあるが、とりあえず
歴史上でもほとんど確認されたことのない、半ば空想上の生物となりつつある種族。
だそうです。
『歴史上でもほとんど確認されたことのない』とあるが、それが称号にある『ユニーク個体』と関係しているのだろう。多分相当低い確率を引き当てたな。
『では続いては
「おっ、出たな」
こちらもひとつの醍醐味だ。種族と同様、いや運営によるとそれ以上の数があるらしい。
10レベル毎に新たな職業を取得することができ、新たに取得した後も、以前の職業が失われるということはない。
職業に関しても全て自由にという訳ではなく、この職業とあの職業を取得することで解放される職業があったり、その種族専用の職業があったりするらしい。
職業の羅列をスクロールしていく。
スキル欄にある回避や隠密といったものから見るに、恐らくこの種族は
ただあんまり
どうしたものかと悩んでいた頃、ひとつの職業が目に飛び込んでくる。
「
面白そうだ。詳細をみよう。
取得条件→
無数の足に武器を持ち、手数で圧倒する歴戦の
平たく言えば、強いムカデしかなれませんよーってところか。
てかやっぱり普通の百足も存在してたんだな。
他は結構大変そうな条件があるが、
これを逃す手はないだろう。
俺は迷いなく
『それではミナト様、これでキャラメイクは終了です。The Second Lifeの世界を思う存分、楽しんでください』
再び眩い光が俺を包んだ。
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