薫子の心霊日誌「鈴」

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第1話 襲い来る人影

 薫子の部屋の壁掛け時計の針は0時を指している。


 シャカシャカとテレビの前で歯を磨く薫子は洗面所へと向かう。


 口をゆすぎ、鏡の前でヨレヨレの服を整える。


 洗面所から出てベットに向かおうとすると、裸足で小さい何かを踏む。


「痛っ」


 踏んだものを見ると、小さな鈴が足の裏に引っ付いていた。


 見覚えのない鈴に首を傾げながら、鈴を化粧棚の天板に置き、電気を消し、布団の中に潜り込む。


 布団の中は、ようやく春も近付き、寒くなくなってきたようだ。


 薫子は友達からのLINEを一通り確認したあと、眼鏡を取り、そのまま眠りにつく。




 時計の針が2時を指したころ、音が聞こえる。


 モゴモゴ。


 音に反応するように薫子が寝返りを打つ。


 モゴモゴ。


 薫子の瞼がゆっくりと開くと、化粧棚の横に黒い影が見える。


 に…て…。


 モゴモゴというその音が人の声に聞こえてくる。


 薫子は布団のなかから目を凝らす。


 すると、黒い影の輪郭がハッキリと見えてくる。


 薫子はおそるおそる枕元に置いた眼鏡を取り、耳にかける。


 視界がはっきりするが、人影は消え、音も聞こえない。


 慌ててスマホのライト機能を立ち上げ、光を化粧棚に向けるが、そこには誰もいない。


 薫子は光と共に目線を、化粧棚から壁に立てかけた掃除機、掃除機からテレビへと移していく。


 光がテレビへと移っていくその瞬間、薫子はギョッとする。


 見知らぬ女がはっきりと目の前にいるのだ。


 前に垂らした長い髪の毛で顔を確認することはできないが、雰囲気からして20代女性のようだ。


 そして薫子は何故かその女性を知っている気がした。


 あまりの驚きに光を向けた状態で動けずにいると、その人影は、人とも獣とも言えない声で、薫子に向けて両手を広げて走ってくる。


「グァァァ」


「うわぁ!」


 薫子がベットから飛び起きると朝を迎えていた。


 息を荒くして冷や汗を流す。


 ふと時計に目をやると、時計の針は9時を指す。


 「やばっ」


 薫子は慌てて ベッドから飛び起きる。


 朝ごはんも食べない状態で服を着替え、玄関から飛び出す。


「おはようございます」


 マンションの前で掃除をする管理人らしき男に挨拶をされる。


「おはようございます」


 薫子は慌てて挨拶を返し、大学へと向かった。


※作品を映像で見たい方はこちらから

https://youtu.be/UPLqnsSKeSY

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