第12話 準備を整えるとき(復職診断書と産業医面談)
私がリワークに通い始め2ヵ月が過ぎようとしていた。
概ね2週間に1度の間隔で、主治医の診察を受けていたとき、「コロナは心配ではありますが、そろそろ出勤訓練を始める準備をしましょうか」という言葉があった。
(2024年現在も3週間に一度の外来診察を受けている)
実は、この言葉は非常に大きな意味を持つ。
つまり、治療とリハビリの進捗は概ね良好に進んでいることから、病院の疑似空間ではない本物の社会の中で最後の調整をしようというものだからである。「リワークの卒業準備を始めましょう」という意味でもある。
そこで、すぐに産業医に連絡を取り、面談の予約をお願いするとともに、主治医とリワーク担当でもある院長に復職への診断書に関連したお願いをした。
主治医の先生には、病状と原因との直接の因果関係は記述しないが、やはり適応障害の原因が部署の環境にあったこと。服薬している内容ではこれまでのような一昼夜勤務・運転業務取扱は行えないこと(運輸業に携わっていた者としては、一瞬の判断ミスはもちろん、起床遅延なども「事故」として扱われる。それが「服薬していたからだ」という言い訳は通用しない厳しい世界でもある)。それを加味したうえで、「安全確保」を最優先とした勤務箇所変更が望ましいという内容を入れてほしいとお願いした。
また同時に、あの院長先生の神通力である。「○○医科大学名誉教授 ◎◎病院長 誰々」というダブルネームでいただけるとありがたいというお願いをした。
この二つのお願いに、主治医の先生からも「概ねその内容で大丈夫でしょう」と、会社に提出する際の言葉や用語についてこちらから説明をして了解いただけた。
院長先生も、ただダブルネームで出すのではなく、リワーク担当医として意見書を出していただけるというありがたい配慮をいただいた。また、ご自分の名前が役に立つのであればと、論文のコピーやお名刺を預けてくれた。
しかし、このとき不安がなかったわけではない。これまでずっと担当されていた産業医(精神科)の先生が変わってしまっており、これまでの方針が変わってしまう可能性も残っていた。
前回と同じく、私との面談が先行して行われた。
そこで、最初にこれまでの経緯を話すと共に、「院長から預かってきました」と例のものを出したところ「私の大先輩です」と新しい産業医の先生は答えた。……世の中狭いものである。
この時点での診断書の素案を口頭で説明し、服薬の処方内容の手帳(「お薬手帳」というあれ)を見た瞬間「あ、これは眠気が出るから(これまで現場長が主張していたような運転取扱業務への復帰は)ダメ!」と即断言した。そのうえで、「病欠の原因が原因だしね」ということで、産業医の意見書の内容は概ね固まったようだった。(この産業医の意見書というのは、基本的に会社人事課の権限よりも強い)
次に三者面談となり、産業医から元職場(元業務内容)復帰は安全確保のためには容認できないこと。業務内容に制限をつけることなどが伝えられた。その頃にはいろいろな裏の経緯は分からないが、人事課がすでに動いているということが話題に上がっており、事実上職場が変わるということが既定路線になりつつあったようでった。
そのうえで、1ヵ月の月~金(実質は週4日がほとんどであったが)に朝9時~最終的には夕方5時半までの出社訓練を行うということで、うまくいけば7月1日を正式復帰をターゲットにすることになった。
(正式な病気休暇の期限は7月10日ということが確認できたので、そこでの10日は180日リミットに対する非常時の余裕として使えることになった)
あとは私自身の心身の調整が残された日数の中でできるかという時間との勝負である……。
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