第5話
さっき、蓮くんに真理の事を話した。
真理と別れてから、真理の名前を口に出したのは始めてだ。
蓮くんは、ずっと黙って何も言わずに私の話を聞いてくれた。嬉しくもあり、申し訳なくもあった。
言ってよかったのかな。
久しぶりに真理の声を聞きたくなった。
久しぶりに真理の言葉に触れたくなった。
よし。真理にメールしよう。
勢いで、SMSを開いたものの何を送ればいいかわからない。
別れたのが高校の卒業式でそれ以降会ってないから、もう4年も会ってない。
それに、連絡先だって変わってるかもしれない。
届くかなんてわかんないんだよ。
ん?そうだよ。届かないかもしれない。
じゃあ、送っちゃえ。
えいや。
『最近、どう?』
『元気だよ。莉愛は?』
幸か不幸か返事はすぐに来た。
ちょっと、驚いた。
『元気でよかった。私も、元気。』
お互いの最近の出来事を話した。
昔、寝る前にベットでニヤニヤしながら、こうやってメーりしてたな。
懐かし。
そんな過去の甘い記憶は速攻で壊された。
『あのね、私、彼氏できたんだ』
彼氏?彼女ではなく。
『彼氏?』
『うん。プロポーズされた。』
プロポーズ?
『真理はなんて?』
『オッケーした。』
そうなんだ。
なんだろう。私達の過去なんてもう無かったのかな。
そんな気になる。
『ちなみに、お相手は会社の人?』
そういえば、真理が今会社に勤めてるのかも知らないや。
『莉愛も知ってるよ。』
私も知ってる?
私が知ってて、真理の彼氏になりそうな人。
『泉日?』
『そう。滉。』
泉日滉と私と真理は、高校の時の友達。
いわゆる、イツメンってやつでいつも一緒にいた。
滉は、私と真理が付き合ってた事は知らないはず。
多分。滉は、生真面目すぎる所があるけど。
その分、すごい優しい。
滉なら、気づいても言わないだろう。
『泉日なんだね。泉日、優しいもんね。』
『うん。優しいよ。』
『じゃあ、お幸せにね。』
正直言って、辛い。
早く会話を終わらせたい。
『あのさ、』
だけど、そんな私の気持ちはお構いなしにメールは届く。
『どうしたの?』
『滉に、私がレズだって。言った方がいいかな。』
刹那、私の頭で悪魔が囁く。
莉愛がレズだって知ったら、泉日と莉愛はわかれるかもしてない。
刹那、私の指は天使の声を聞くことなく動いていた。
『うん。絶対、言った方がいい。』
既読がついた。
『わかった。ありがとう』
送って気がついた。
違う。駄目。
だめだめ。莉愛、だめ。
私の馬鹿。
こんな私が嫌だ。
私の馬鹿。
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