あの日のはなし。

瑞稀つむぎ

第1話

 手に持つスマホには、雪がのっかてきて動画を見ようにも見づらい。早く来ないかな。

 そう思い、顔をあげると1人の女性と目があった。

「滉。おはよう。お待たせ。」

「うん。真理、おはよう」

 「よいしょ」と柱に預けていた体を起こす僕に、真理が「あんた、おじいちゃんなの?」とつっこむ。でも、僕にはそれがからかってるだけだとわからなくて「いや、まだ22歳だけど…」と真面目に返してしまう。

「知ってる。だって、同い年でしょ。しかも、幼なじみ。」

 そう。僕と真理は幼なじみ。そして、今は恋人。

「ほら、行くよ」

「うん」

「行くよ」と言った割に彼女は来ない。

「なに?」と顔で尋ねる。

 真理は不満そうな顔をしたあと、「ほら」と手を出してきた。思わず、頬がゆるむ。

「なるほど。真理は俺と手を繋ぎたかったのか」

「馬鹿。そういうのって、いちいち口に出さないもんなの。」

「ごめん。ごめん」

 笑いながら謝る僕に、真理は怒ったふりをする。

「全く…今日ぐらい手だって繋ぎたいじゃん。だって、今日は付き合って3年目の記念日でしょ?」

 それぐらい、知ってるよ。

 僕は、君の事が好きだから。

 昔から今も未来でも、ずっと。

 僕は唐突に真理の手を離し、真理の顔を見つめる。

「え…?あの、さっきのは、本当に怒ったわけじゃ…」

「真理、僕と結婚してください。」

「え、滉?」

「あ、指輪もあるよ。ほら。」

「いや、別にひざづいてほしいわけじゃなくて。」

 なかなか、返事をしない真理に僕は少し不安になる。

「真理?」

 彼女は泣いていた。

「あ、あの、そんなに、嫌だった? あの、ごめ…」

「馬鹿」

 真理が僕を軽く叩く。

「好きな人から告白されて、嫌なわけないでしょ。嬉しかったの。滉の事だからさ、記念日だって忘れててもしょうがないかな。って思いつつ、やっぱり覚えててほしくて。覚えててくれただけでも嬉しいのに…。」

 真理が僕を見る。

「滉、ほんとにありがとう。これからも、よろしくね。」

 思わず、愛らしい彼女を抱き締める。

 冷たい時もあるし、不器用だけど、 やっぱり僕の彼女は最高だ。

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