第40話 翡翠の洞窟 第2階層

 「第一階層とさほど変わりはないんだな」

 「はい…ただ先ほどのゴブリンよりは強い魔物が出てくると思います」

 「ほう…ムッ…」


 前方に人影が見える。


 「人?…人影が見えますね」

 「先客がいたのか…?」

 「普通はいないですけど…」


 その人影はこちらへと歩いてくる。


 「あれは…………」

 「鎧?」


 人影の正体は銀色の鎧の騎士だった。


 しっかりと剣と盾を装備している。


 一定の間合いで鎧の騎士は立ち止まる。


 「貴様は何者だ?」

 「……………………」

 「聞こえないのか?」

 「……………………」


 鎧の騎士が剣先をこちらへと向ける。


 そして僕に向かって突き刺そうとした。


 僕はそれを剣を抜き受ける。


 「どうやら話す気はないらしいな」

 「…………………………………」

 「いいだろう、貴様がその気なら容赦はせん」


 僕は鎧の騎士の剣を払う。


 すぐに鎧の騎士が僕に剣を振るう。


 「遅すぎるな」


 僕はそれをかわし鎧の騎士の首を斬った。


 鎧の騎士の首がソルメイスの方へ転がり落ちる。


 「ヒッヒィィィ!」


 ソルメイスは悲鳴を上げて驚いた。


 「騒ぐな…首を斬っただけだ」

 「首を斬っただけって…メアさんは容赦がないですね…」

 「人だろうと魔物だろうと命を狙われたら命を狩るものだ…情けをかければ己の命を落とすことになる…覚えておけ」

 「な…なるほど…」

 「さて、先へすす…」


 妙だ。


 鎧の騎士は首を斬られたのに関わらず突っ立っている。


 普通、首を斬られた場合倒れるものではないのか?


 僕は鎧の騎士の目の前に行く。


 確認しようとしたその時だった。


 首を斬られた鎧の騎士が僕に剣を振るってきたのだ。

 

 僕は間一髪かわす。


 「ハッ…どういうことだ?」

 「まさか…不死身…?」


 ソルメイスがそう言う。


 「不死身だと?そんな魔法の世界のようなことが…あっ…」


 そうだった。


 この世界は僕の世界とは1800度ぐらい違う世界だった。


 「不死身…いや…」


 僕は考える。


 先ほど鎧の騎士の首を斬った時のことを思い出す。


 手応えが無かった。


 「おい!ソルメイス!その騎士の頭を確認しろ!」

 「えっ…は…はい!」


 ソルメイスは鎧の騎士の頭を確認する。


 僕の読みが正しければ…


 「えっ…な…中身が無い…!?」

 

 ソルメイスは驚いた。


 「やはりな…」

 「どういうことですか?」

 「この鎧の騎士は人ではない…つまり生きてはいないのだ」

 「生きてはいないってどういうことですか?」

 「ソルメイス…一旦任せていいか?」

 「え?ええ!」

 「頼んだ」


 僕はソルメイスに鎧の騎士の相手を頼んだ。


 そして僕は奥へ走る。


 そしていかにも隠れやすそうな岩陰を覗く。


 「やっぱり…ビンゴ!」



 「うっ…斬っても感覚が無いし…どうやって倒せばいいんだよ…メアさんもどっか行くしさぁ…」


 鎧の騎士がソルメイスに剣を振るおうとする。


 「もう嫌だぁ!」


 ガジャン。


 鎧の騎士は力を失ったようにバラバラに崩れ落ちた。


 「へっ……あれ?どういうこと?」

 「まだ、わからないのか?」


 奥からメアが歩きながら言った。


 「メアさん…一体…どうやって…」

 「…まあ、説明するとだな…」


 僕がやったことを説明しよう。


 まず目を凝らします。


 なんでって?


 それは鎧の騎士に繋がっている魔力の糸的なものを見るため。


 そしてその魔力糸を辿ると。


 予想通り岩陰に悪魔のちびっ子みたいな魔物が隠れていた。


 その魔物を倒した。


 「と…いうことだ…」

 「つまり、魔力による遠隔操作だったわけですね…」

 「そういうことだ…目を凝らさないと見えない程の細い魔力…気づかなければ永遠と鎧の騎士は倒せない…」

 「流石ですね…メアさん」

 「フン…ソルメイスにも気づいてほしかったがな…」

 「僕は考えもしなかったですよ」

 「これを機に学べよ…」

 「はい!」

 「結局…不死なんかじゃなかったな…」

 「でも…この世には不死になる方法もありますよ…」

 「本当か?」

 「って……本で読んだ気が……」

 「伝説だろうそんなもの…」

 「いつかメアさんと伝説を確かめてみたいです」

 「ソルメイスがマシになったら考えてやる」

 「よし…頑張らないと!」


 僕らは翡翠の花が咲いているといわれている第三階層へと進んだ。





 


 

 



 



 

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