#5 あの人も「賢者タイム」みたいな言葉使うんだー、ってやつ。
二宮は、昨日、夜しか眠れなくなっていた。気になっていることがあった。
生徒A:「おはよー二宮」
二宮:「……おーおはよ」
彼の頭の中で再生されるのは、
(一ノ瀬:「え何賢者タイム?」)(第三話参照)
賢者タイム。
その時二宮は、
二宮:「え? 一ノ瀬さん賢者タイムって言ったよね? あの一ノ瀬さんが?」
二宮:「同じ人間だったんだ……一ノ瀬さんって」
と思ったらしい。
二宮:「ということで一ノ瀬さん、あの時どういう心境だったのかお聞かせ願いたいのですが」
一ノ瀬:「は? いや別に賢者タイムとか今時誰でも使う言葉でしょ」
二宮:「いや使わない。こと一ノ瀬さんにおいては、そんなことあり得ない」
一ノ瀬:「え、公式が出した新衣装が解釈不一致だった時のキャラゲーのオタク? 公式が全てなんだよ? 私が言ったんだよ? 賢者タイムって」
二宮:「その無駄に俗っぽいツッコミ……ああ駄目だ一ノ瀬さんのイメージが崩れ去って行く」
一ノ瀬:「あなたの中で私って何なの?」
二宮:「推しです」
一ノ瀬:「ええ……(困惑)」
二宮:「いや待て。一ノ瀬さんは、賢者タイムの意味を分かっていないだけかもしれない」
一ノ瀬:「分かってないと使わないでしょ。ほら、ハイになった後に『マジで私、何やってんだろ』ってなる時間のことでしょ。あの時も、七村が、自分の手のひらを突き刺してから流血するさまをじっと見ていたから……」
二宮:「パアアアアアァァ(光)」
一ノ瀬:「何パアアアアアァァ(光)ってしてんの、ねえパアアアアアァァ(光)って何なの! ねえ何その明るい顔は!」
二宮:「いやでも、何で一ノ瀬さんがそういう言葉を知っているのか……一ノ瀬さんの親って結構厳しい感じだよね?」
一ノ瀬:「(なんか勝手なイメージがついてる気がするけど、うちの教育、そこまで厳しくないよ)ええっと、それに関してはうちのお兄さんの影響かな。普段は離れたところで暮らしてるんだけど、たまにうちに寄ってくるんだよね」
二宮:「お兄様……一体何を吹き込んだんだ」
一ノ瀬:「それでうちに寄ってきたときにお兄さんに見せられた動画が……」
二宮:「動画だと!?」
一ノ瀬:「アメリカ人の男の子が残酷な天〇のテーゼを狂乱しながら見よう見まねで歌い踊るっていう動画だったんだよね」
一ノ瀬:「そのコメントで賢者タイムだっていう言葉が出てきて、面白いなって思って結構使ってるんだよね」
二宮:「……」
二宮:「……一ノ瀬さんのお兄様ってさ、ニコ厨?」
一ノ瀬:「……ニコ厨って、何?」
無言の時間が十秒間ほど過ぎる。
二宮:「……一ノ瀬さん」
二宮:「一生かけて幸せにします。。何があっても守り抜きます」
一ノ瀬:「え普通に無理。キモい」
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