#2 ビジネスバカップル。
一ノ瀬、下校中。今日は、何と十五夜。
七村:「一ノ瀬さん! 奇遇だね!」
一ノ瀬:「何アンタ私に単純接触効果狙い始めたの? それで何で茂みに隠れてんの?」
七村:「あそこにバカップルがいるんだよ」
七村が指差す先、レジャーシートの上、男女一組。
バ:「月がきれいですね」
カ:「こちらこそ月がきれいですね」
一ノ瀬:「頼むからどっちか文法的に崩壊していることに気付いてくれあとリア充爆発しろ」
七村:「駄目だよ一ノ瀬さん。ああいうリア充は一瞬で殺るんじゃなくて、例えば……そうだな、
どっちかを犠牲にしないと出られない部屋とかに突っ込んで愛を試すとか」
一ノ瀬:「きっしょ……斜め上の愛の試し方」
七村:「それが嫌なら、孫と子に看取られて老衰で死ね、とでも声をかけたらどうかな?」
一ノ瀬:「あんたはどっちの味方なのよ」
七村:「ああいうバカップルのことを馬鹿にできるし、恋人いないことを残念なことだと思って、自己嫌悪してる奴のことも馬鹿にできる非リアとしての今のポジション、最高だわー」
一ノ瀬:「典型的な(?)恋愛嫌いなタイプの現代の若者……要約するとここにいる全員の敵ってことね死刑」
七村:「もっと現代の若者の価値観を尊重してくれないかな……」
バ:「なんかさっきから後ろに隠れてる人たち出て行ってくれないね」
一ノ瀬:「はっ、バレてる!?」
カ:「このままじゃ、カップルのふりしていちゃつくことによって、人を寄せ付けないように月見の場所取りするバイト、クビになっちゃう」
一ノ瀬:「どんなバイトだよ」
バ:「雇い主が月見をしに来るまでにあいつらを追い払わないと」
七村は、ずっとニヤついている。
七村:「やべえ面白え一生見てられる」
一ノ瀬:「お前人の心とかないんか?」
カ:「さて、続きをしようか」
一ノ瀬:「続きって……」
バ:「表面上は愛してる!」
カ:「僕も見かけ上は愛してる!」
一ノ瀬:「こいつらただのバカップルじゃなくてビジネスバカップルだったわ」
七村:「しかもビジネスでバカップルしてるんじゃなくてバカがビジネスカップルしてる」
一ノ瀬:「余計バカに見えるな」
カ:「くそ、全く出て行く様子がないね」
バ:「えっと次は、キスだ、キス」
カ:「あっそういうのは本当に好きな人ができるまで取っておいた方がいいよ」
バ:「いやキスって反対にするとスキだから、本来は好きじゃない人とするもんなのよ」
一ノ瀬:「どういう理論だよ」
七村:「……これこいつら本当に脈ねえな」
一ノ瀬:「お前は何を望んでたんだ?」
七村:「え? 本当はどっちかがどっちかのこと好きなんだけどうまく好意を伝えられないからビジネスカップルをして疑似デートしようとしてるみたいな……」
一ノ瀬:「説明しなくていいから」
バ:「あっまずいよ、もう台本一周しちゃう」
一ノ瀬:「薄々気付いてたけど台本あるのね」
バ:「これが最後の壱撃、食らいなさい」
七村:「別に、僕らここまでノーダメージだよね」
一ノ瀬「そうね」
バ:「スゥ、ねえ、私が人を殺したとしてもあなたは私を愛してくれる?」
カ:「うん」
バ:「誰かを騙しても?」
カ:「うん」
バ:「国家を転覆させても?」
カ:「うん」
一ノ瀬:「どういうシチュだよ」
バ:「なんで、なんでそんなに私のことを狂信的に愛してくれるの?」
カ:「だって……僕、知ってるから。君が本当はそんなことする人じゃないって。君がそういうことをするなら、よほど重大な理由があるに決まってる」
バ:「ありがとう、本当に人を殺しても愛してくれるのね、じゃあ」
カ:「うん」
バ:「心中しましょう?」
カ:「……死んでもいいわ」
一ノ瀬:「本当になんだこいつら」
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