そのシスターは丘の上の教会にいる

丸山 令

最悪な目覚め


 その朝。

 ロラ=マテューは、微睡みの中、ぼんやりと目を開いた。



(あら。私、いつの間に眠っていたの?)



 まだ覚醒しない頭で、昨晩の記憶を辿りつつ、周囲に視線を向ける。


 そこは、つい一ヶ月程前から住み始めた新居の寝室。

 


「あら? テオは?」



 最愛の夫の姿を探して、ロラは初めてベッドの上の惨状に気付いた。


 新調した真っ白なシーツやケットにまで広がる、赤黒い染み。


 ロラは、飛び起きた。

 途端聞こえた、重々しい音と耳障りな金属音。

 視線を向けると、そこにはテオが愛用しているキャンプナイフが転がり落ちていた。

 

 赤黒く汚れたそれを見て、ロラは直ぐに自身の両手を見る。


 ナイフと同様、両掌には赤黒いものがこびりついていた。


 ロラは目を見開き、声を上げようとして、慌てて握りしめた手で口を押さえた。



(悲鳴を聞きつけた誰かに見られたら困るわ。今は、この場を何とかしなくては……)



 震える体を宥めながら、ロラは汚れた寝具をバスルームへと運んだ。

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