そのシスターは丘の上の教会にいる
丸山 令
最悪な目覚め
その朝。
ロラ=マテューは、微睡みの中、ぼんやりと目を開いた。
(あら。私、いつの間に眠っていたの?)
まだ覚醒しない頭で、昨晩の記憶を辿りつつ、周囲に視線を向ける。
そこは、つい一ヶ月程前から住み始めた新居の寝室。
「あら? テオは?」
最愛の夫の姿を探して、ロラは初めてベッドの上の惨状に気付いた。
新調した真っ白なシーツやケットにまで広がる、赤黒い染み。
ロラは、飛び起きた。
途端聞こえた、重々しい音と耳障りな金属音。
視線を向けると、そこにはテオが愛用しているキャンプナイフが転がり落ちていた。
赤黒く汚れたそれを見て、ロラは直ぐに自身の両手を見る。
ナイフと同様、両掌には赤黒いものがこびりついていた。
ロラは目を見開き、声を上げようとして、慌てて握りしめた手で口を押さえた。
(悲鳴を聞きつけた誰かに見られたら困るわ。今は、この場を何とかしなくては……)
震える体を宥めながら、ロラは汚れた寝具をバスルームへと運んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます