第2話 剣道部

 俺の親父は、市役所勤め。

地元の剣道育成友の会(剣友会)で師範をしていた。

俺は、幼稚園児の頃から親父に連れられて、剣道を始めた。

さすが、倉田先生の息子さんだ!!筋が良い!!

よく、そう言われた。

生まれながらに、遺伝的に剣道が上手い!なんて話は、聞いたことがない。

つまり、父親が上手い人だろうが、強い人だろうが、そんなこと俺には1ミリも関係してない。


ただ、俺は剣道が好きだった。

小さい時に、そう刷り込まれていたのかもしれないけど、剣道はかっこいいものだと思っていた。

剣道の時に着る、道着と袴、それもかっこいいと思っていたし、防具を付けると更にかっこよかったし、竹刀を持つと更に更にかっこいい!!と、思っていた。


好きだったから、割りと頑張って稽古して、小学生の時は試合や大会で勝てるようになった。

勝てるようになると、更に楽しくなって、また頑張るって、良い感じのループになっていた。


 

 長野の田舎だったから、中学は、あまり何も考えずに、市内の公立の中学校へ入学した。

部活見学で、とりあえずいろんな部活を見て廻った。

俺は運動が大好き。

サッカーとバスケもいいなぁって思ったけど、まぁ 俺がやるべきは、やっぱり剣道だろう。


入部してみてわかったことだが、3年前に有段者の顧問の先生が定年退職され、それからは1年毎に顧問が代わっているそうだ。

剣道をまったくやったことのない先生が顧問になっていて、ルールは本を読んで理解しましたというような感じ。

そんな感じで毎年毎年代わっているのだと。

今の3年生の先輩は入部して新人顧問と共に、2、3年の先輩に教わりながらやっていたと。

つまり、今の先輩たち3年生も2年生も、基本をちゃんと教わっていない。

なんてゆうのか、当たり前のことまでできていない気がする。

正座して話を聞くとか、礼に始まり礼に終わるみたいなこと、すべて。

立ち居振る舞いからして、いろいろ気になる。

だけど、それを俺が先輩たちに注意するのも気がひける。


顧問の先生に、うちの親父の剣友会へ稽古に来ませんか?と誘ってみた。

やんわりと断られた。

この人も、剣道部の顧問は1年間の我慢と思っているのだろう。

必死にやろうという気はないようだ。


俺は、剣友会の方へ行って、師範の先生方に稽古をつけてもらったりしていたが、他の部員もそこまでやろうという気もないようで、まったく上手くならないし、強くならない。

ヤル気のなさに、こっちの士気まで落ちる。

大会に行くと、散々な結果だった。

個人戦で勝てるのは俺と、経験者の数人だけ。

剣道がつまらないと感じるほどだった。






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