予言の石碑

宵@ZIBU

予言の石碑

2024年3月10日のことでした。

私は仕事の休みが取れたので趣味である樹海探検に出かけました。

樹海はとても綺麗で澄んでおり、仕事の辛さも吹き飛ばしてくれる。そして、現実からかけ離させてくれるので生涯の趣味でもあると思っています。

話が逸れました。さっきも言いましたがいつも通り仕事の休みを取り、一人で樹海へ出かけました。流石に素人では無いので樹海に入っても遭難などしません。この日も事前確認を何度も何度も行い、コンピューターと地図確認によるシミュレーションも忘れずに行い、万が一の事態に備えてSOS信号発信機などその他諸々をバッグの中に入れ、樹海探検に備えていました。

当日になり、持ち物も朝早くから確認した後に満を持して樹海探検に挑みました。

最初はいつもどおり写真を取ったり、空気や雰囲気を感じ取ったりして楽しみました。樹海には2日間ほど滞在するつもりだったのでまず初めに今夜眠る場所を探しました。この探す作業も楽しいのです。さて、そんなこんなで眠れそうな洞穴を見つけ、そこで火を焚いたりして暗くなっても良いよう備え始めました。

案の定、樹海なのでいつもより早く暗くなり初め、焚き火が目立つようになってきました。私はこの感覚に心を踊らせ、持ってきたビールとつまみで一人晩餐を始めました。酔も完全に潰れると危ないので程々にしておき、持参していた寝袋にくるまってその日は寝ました。

問題はここからでした。次の日、目を覚ますとそこには寝袋、焚き火の後、ランタンそしてそもそもの洞穴が無く、光が差し込んでいる樹海に囲まれた小さな丸い平地のようなところでした。私は隣にあったバッグを見渡して探しましたが残念ながら無く、混乱し始めました。私はここでパニックになっても良いことはないと長年の探検歴の頭脳のお陰で落ち着き、ここが何処なのかを探検してみることにしました。これでも私は基本的なサバイバル知識を持っており、何があってもどうにかこうにか対処できると自負していたので食料、水などはそこまで心配しませんでした。

真ん中に向かって歩き初めて数分程度で真ん中、中心にたどり着きました。そこからは状況が把握でき、驚くべきことに奥には神社らしき建物がありました。

私は何か使えるものは無いだろうかと思い、見つけた神社に向かうことにしました。

暫く歩いて神社にたどり着きましたがその神社は誰の眼にも行き届いていない所謂廃神社と言われるような場所でした。近くには川が流れていたのでこの時には非常に助かりました。それは置いておいて、私は石造りで崩れている鳥居に会釈し、境内に足を踏み入れました。思っていた以上に広く、手水舎もしっかりと完備されていました。しかし水は枯れているようでした。まぁそれは良いとして、本殿に向かってあるきはじめました。本殿の前には賽銭箱、鈴が取り付けられていました。しかし、この神社は全体的に長らく手入れされていないので、ところどころ崩れており、中にも容易に入ることが出来る状態でした。

このときの私は非常に愚かで、好奇心に進められるがままに本殿へ入ってしまいました。中はところどころ木で侵食されており、光が差し込んでいました。それがまたなんとも美しいとその時に考えていました。そして、肝心の何が祀られているのかと思い、奥を見てみるとそこには崩れ、ツタで覆われている石碑が有りました。見た所それがこの神社に祀られているものなんだと思い、興味本位で間近で見てみようと近づきました。

その石碑は見た所どう見てもとても古く、江戸時代より前にあるものだと理解しました。なぜならば明治や大正時代のものならばどんなに手入れをされていなくてもここまで風化していないはずだからです。

そして次に何が書いてあるのかを確認しました。

字はとても小さかったのですがギリギリ、読めました。

”人々の平和と 社会の繁栄が願われる時 日出処の神の国は 愚かなる火に巻き込まれ 下の国に蹂躙されるであろう それは偽の神が生まれ落ち千九百四十五の時がたったときである”

私は意味が分からず次の文章を読みました。

”神の雷が神土を飲み込み 世界を狂わせ絶望へと至らしめるであろう これは偽の神が生まれ落ち二千十一の時が経った時である”

私はまさかと思いすぐさま次の文を読み始めました。

”日出処の神の国に 邪悪なる穢が入り込み 総てを飲み込んで穢へと堕としいれるであろう これは偽の神が生まれ落ち二千二十の時がたったときである。

やっぱりだ。私はこの時既にこの石碑の意味を理解しました。それと同時に顔に汗が伝うのが分かり、それが更に私を恐怖へと陥れました。

私は恐る恐る次の文を読みました。

”日出処の神の国が新たなる日を迎えた時 人々を狂わす神の天罰が 神の国の海を襲い 総てを飲み込み 浄土と化させるであろう これは偽の神が生まれ落ち二千二十四の時が経ったときである”

明らかに江戸時代より前に創られた石碑であるのに大きな事ある出来事を的確に示していました。

私は怖くなり、石碑が示している最後の文を見ました。

”日出処の神の国とそれに準ずる国が火を見る時 総てを狂わせ総てを浄土へと化させ 総てを取り払い 新たな創紀を生み出すだろう これは偽の神が生まれ落ち二千百十七の時が経ったときである”

私は石碑に震えながら会釈し本殿を出ました。

それから私はしばらくの間戻れなかったのですが、ある時ふと寝るとあの洞穴に戻っていました。私はバッグに入っていたスマホで時間を確認しましたがどうやらアレから一晩しか経っていなかったようでした。体感的には何週間も居た気ですが。

私は直ぐ様来た道を戻り、家に帰りました。

家についた矢先にあの事に関するような民話、怪談、民謡、子守唄など色々調べました。そして一つの事実にたどり着きました。

場所は詳しく記載しませんがはるか遠い昔に”予言スルベキ石碑ノ神”が私の行った樹海付近の集落で祀られていた事が分かりました。

これから先、樹海の探検はやめませんがあの付近の樹海に行くことはやめようと思います。
















※この物語はフィクションです。実在のものと関係は一切ありません。

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