第394話 三倍返し

 今回の遺跡に関する出来事が単なる間違いではなく犯罪だと判断したヨンダル教授は、調査チームの警護として来ている兵士にバオドを拘束するように命じた。


 宙域同盟が研究や調査を行うチームを派遣する時、警護兵を随伴する事が多い。その警護兵は逮捕権を持っており、チームに害をなす者を撃退、または逮捕する事ができる。


 バオドは宙域同盟に逮捕されて裁判に掛けられる事になるだろう。それを知ったオーク帝国は、どう動くだろう?


 ヨンダル教授は調査を中止して帰還するという。我々は調査船を見送ってから、イズモのブリッジに集まった。


「マスター、オーク帝国は手を引くと思う?」

「どうだろう? オーク族は欲深いと聞いているからな。また仕掛けてくるかもしれない」

「そうね。ところで、マスターは気付いていないけど、今回の事で気になる事があるの」


「それは何でしゅか?」

 話を聞いていたサリオが口を挟んだ。

「オーク族がノーム族に貸したアクティブステルス装置よ。他にもボルガート星系に何か仕掛けてくるんじゃない?」


「それは……あるかもしれないでしゅね。オーク族が持っているアクティブステルス装置は光学系と電波レーダーを無効化しゅる機能がありましゅから、何かを見付けるとしゅれば、重力波レーダーでしゅ。イズモの重力波レーダーでじっくりと探してみましょう」


 飛びながら探査システムを使うと、どうしても見逃してしまう可能性が出てくる。そこで第四惑星デルトアースから少し離れた宙域に停船し、重力波レーダーを使って徹底的に探査した。


 二時間ほど探査を続けた時、重力波レーダーに反応があった。

「ゼン、小惑星だと思われる物体が、デルトアースに近付いている」

 レギナが報告した。その情報がメインモニターに表示される。

「これは何だ?」

 首を傾げていると、サリオが軌道を計算した。


「このままだと、デルトアースに落下しましゅ」

「重力波レーダーだけに反応するのだから、普通の小惑星ではあり得ないな。詳しく調べるから待ってくれ」


 スピリットサーヴァントであるルークスナメリを起動し、その怪しい小惑星に向かって飛ばした。それからイズモをデルトアースの裏側に飛ばすと、そこでアクティブステルス機能を使ってステルスモードになってルークスナメリを追う。


 ルークスナメリと意識の回線を繋いで、その目を通して小惑星を見る。と言っても、スナメリは垓力を感じて対象物の存在を感知しているので、肉眼で見ている時とは違うように見える。これは情報支援バトラーを利用する事で肉眼で見ているような映像に変換する事も可能だ。


 その小惑星は直径九キロほどの大きさがあり、輸送船のような航宙船が着陸していた。その航宙船が小惑星を加速すると同時にアクティブステルス機能の効果を発揮しているようだ。


「こいつら、小惑星をデルトアースに落とすつもりだな」

 それが分かると強烈な怒りを覚えた。ルークスナメリとの回線を切って意識を肉体に戻すと、レギナたちと相談を始めた。


「ゼン、あの小惑星をデルトアースに落としゅというのは、本当なのでしゅか?」

 サリオが不安そうな顔で質問してきた。

「小惑星には、輸送用と思われる航宙船しかなかった。たぶん小惑星自体を兵器とするつもりなのだろう」


「あのサイズの小惑星が隕石となって落ちれば、大惨事になる」

 レギナが顔を強張らせていた。

「サリオ、被害を計算してくれ」

「スピードと質量をパラメータにして計算し、デルトアースに落下した場合は……採掘現場で働いている人々は全滅、採掘が再開できるようになるのは、どれくらい先になるか?」


「あの小惑星は、木っ端微塵に破壊するべきよ」

 スクルドが言った。レギナとサリオも賛成のようだ。

「分かった。破壊しよう」


 我々はイズモの主砲である歪空雷艦首砲の準備を始めた。それが終わると、乾次元力ジェネレーターが乾次元空間から取り込んだ大量の雷乾力を艦首砲に流し込み、艦首砲のエネルギー源として充填されていく。


 そして、歪空雷弾が形成されて小惑星に向かって撃ち出された。歪んだ空間の中に稲妻が輝く球体が宇宙を飛び、姿を隠している小惑星に突き刺さる。その瞬間、小惑星の姿が肉眼で見えるようになった。


 小惑星が歪空雷弾の爆発で粉々になって周囲にばら撒かれる。小惑星に着陸していた航宙船もバラバラになり、宇宙デブリとなった。乗組員は全滅しただろう。


 しばらくの間、我々は破壊された小惑星の姿をジッと見ていた。

「他にステルスモードになっている敵が居ないか探そう」

 その言葉でサリオたちが動き始めた。念入りに調べたのだが、他に怪しい存在はなかった。それで安心した。


「ゼン、オーク帝国はどうするの?」

 怒りの感情を顔に浮かべたレギナが質問してきた。

「仕返しをする、という事?」

「このまま済ませる気じゃないでしょうね?」

「戦争を仕掛けるのも、問題があるぞ」


 デルトコロニーは人口が少ない小国なので、継戦能力に問題がある。鬼人連盟やブラッド同盟のように長期戦を戦うのは、難しいのだ。


「それなら同じ事を返してやるのは、どうでしゅか?」

 サリオが提案した。

「ステルス隕石爆弾という事か?」

「そうでしゅ。オーク帝国の宮殿を目指して隕石を落とすのでしゅ」


 レギナが首を傾げた。

「さすがに気付くと思うわ」

「気付かれても構わないのでしゅ。その時は警告になりましゅ」


 サリオが言いたい事は分かった。オークの皇帝にふざけた事をしたらお返しするぞと、警告しようと言っているのだ。


「いいんじゃないか。警告してやろう。そうだ。一個じゃなく三個にしよう。三倍返しだ」


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