第206話 カムラン遺跡の収穫
分析用ロボットが取り出した情報を、情報支援バトラーに渡して整理してもらう。
「ゼン、恒星の近くにあった構造体は、何という名前なの?」
情報支援バトラーが整理した情報を受け取ったと知らせると、レギナが質問してきた。
「『ビオア』と呼ばれているようだ」
「そのビオアに入る方法は、分かった?」
私は顔をしかめた。
「航宙船で近付いてビオアの内部に入るには、ビオアを破壊しないとダメらしい。その代わりに地下にアバター接続装置……というものがあるそうだ」
「アバター接続装置?」
レギナが意味が分からないという顔をする。
「ビオアの内部には、点検用のロボットみたいなものが用意されていて、それがアバターと呼ばれている。そのアバターに人間の意識を繋いで、アバターを動かす事ができるらしい」
昔、そういう映画を見た事がある。その映画の中のアバターは、人間のDNAと異星人のDNAを合わせた人造生命体だったが、ビオアの内部にあるアバターは高度な機能を持つロボットだ。
手に入れた情報を基にアバター接続装置を探しに行き、地下へ下りる階段を発見した。その階段を下りると、大きな地下空間があった。地下空間には大きなコンテナのようなものが置かれており、そのコンテナは独自のエネルギー源を持っているようで、稼働しているようだった。
私はコンテナについての情報を調べて驚いた。
「まさか……」
「ゼン、どうしたの?」
「このコンテナのようなものは、『停滞フィールド発生装置』というものらしい」
それを聞いたレギナは、酷く驚いたようだ。停滞フィールドというのは、『時間が止まるか極度に遅くなった空間』という意味なので、文明レベルAの種族でも実現できない技術だった。
「ほ、本当なの?」
「本当に停滞フィールド発生装置だそうだ」
「この遺跡はボロボロなのに、そんな高度なものがあるなんて」
「遺跡自体は、このコンテナを守るもので、あまり重要ではなかったのかもしれない」
そのコンテナを調べると停止ボタンと起動ボタンの二つがあった。
「これをどうするの?」
レギナが質問してきた。
「持って帰りたい」
「そうね。ところでアバター接続装置はどこにあるの?」
私は停滞フィールド発生装置を指差した。
「この中だと思う」
「そうすると、停滞フィールド発生装置を止めないとダメね」
「止めて大丈夫だろうか?」
レギナが首を傾げた。
「それは分からないけど、止めないと中のアバター接続装置を使えない、というのは確かね」
「どちらにしても、停止させないとダメか」
私は停滞フィールド発生装置に近付き、停止ボタンを押した。すると、頭の中に声が響いた。
【停滞フィールドが停止します】
何かが作動する音が響き、停滞フィールドが停止した。すると、コンテナの壁にドアが浮かび上がった。そのドアを開くと小さな部屋があり、そこには二台のカプセル型寝台があった。
それがアバター接続装置のようだ。大きなコンテナのような停滞フィールド発生装置は、それ自体が一つの完結した装置のようである。つまり持ち運べるという事だ。
「ここで、アバター接続装置を試すのはやめるべきよ。何か起きた時に対処できない」
ここには医療マシンも医者も居ない。それをレギナは心配しているのだ。
「そうだな。でも、場所を移した事で、アバター接続装置が機能しなくなる、という事があるかもしれない」
「その時は、ここに戻して試すしかないわ」
レギナが言う方法しかないだろう。それから停滞フィールド発生装置を異層ブレスレットに収納した。ぎりぎり入る大きさだったのだ。
「外に出る地下通路があるらしい」
ドローンやロボットを回収して地下通路を探した。地下空間の奥に扉があり、そこから地下通路へと繋がっていた。そこを通っていけば、戦争サンドワームに悩まされる事もなく脱出できるようだ。
我々はチルタ砂漠を脱出し、ホテルに戻った。サリオとスクルドにチルタ砂漠での出来事を報告する。
「停滞フィールド発生装置とアバター接続装置……凄いでしゅ」
サリオは目を丸くして驚いた。
「さすがモール天神族の遺跡ね。とんでもないものだわ」
スクルドは停滞フィールド発生装置に興味を持った。文明レベルAの種族でも作れないものなのだ。その装置の中に、どれほど深遠な科学知識が秘められているのかを想像しているのだろう。
「ゼン、そのアバター接続装置をどこで試しゅのでしゅか?」
「宇宙港のカズサで試そうと思っている」
翌日、宇宙港に向かった。カズサの格納庫で停滞フィールド発生装置を取り出すとスクルドが調べ始めた。カプセル型寝台が置いてある部屋には専用端末があり、それを使って停滞フィールド発生装置の事を調べようとしたが難しいようだ。
「情報を引き出すには、時間が掛かりそうね」
「だったら、アバター接続装置を試そう。まず私が試してみるよ」
レギナが反対した。
「待って。何があるか分からないのよ。まずあたしが試してみる」
「ダメだ。こういう意識を繋ぐというような経験は、魔導師が慣れている」
話し合った結果、やはり私から試す事になった。カプセル型寝台に横たわり、透明な
その瞬間、身体から意識が離れるのを感じた。ナユタ界へ意識フィールドを伸ばす感覚に似ている。そして、遠くに移動した感覚があり、何かに潜り込んだ。その直後、眩しい光を感じて周りを見回した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます