吸血ってなに?

「有栖はいつ吸血するの?」

 テレビでアニメを見ながら聞いてみた。毎週、《契約》自体はしているが、「血をくれー。」みたいなよくある台詞を言われたことがない。

「吸血は嗜好、それこそ煙草と同じだ。故にしなければ死ぬなんてことはない。茨と白雪は一度もしたことは無いはずだ。」

 吸血鬼の食事=血は空想だったのか。いや、吸血鬼という存在自体空想であって欲しいとは思う。

 有栖たちは普通にご飯を食べるしお酒を飲む。そういうことなんだろう。

「だがして欲しいならいつだってしよう。俺だって我慢しているしな。」

「あ、面白いとこ!」

 テレビを消して迫ってくる。タイミングを間違えた。最近話題の人斬りの女の子のアニメが。

 足首を掴まれ逃げられなくなる。諦めて仰向けに倒れこんだ。あの金縛りになるやつはあれ以降一回も使われていない。有栖なりの気遣いだと受け取っている。

「よく肩を噛んで、みたいな流れがあるが、あれもあくまで創作物だ。別にどこからでも吸血できる。」

 片膝を立てられ、そのままショートパンツに守られていない太腿に牙が刺さった。刺さるときはやっぱりちょっと痛いが殴られるよりは全然だ。直ぐに唇は離れた。噛み痕が赤く残る。

「吸血時に傷が早く治ったり痛みをあまり感じないのは吸血鬼の体液の成分だ。璃杏は元の体質もあるだろうがな。痛みを伴う娯楽などいらないということだ。」

 人間が痛みを感じたところで吸血鬼にはデメリットにならないんじゃ、とは思った。でも、私は、これは人間にとっても娯楽で嗜好になると既に理解している。

「顔が見えるんだ、こっちの方がいいだろう?」

 足を撫でながら楽しそうに言った。

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