第22話 SS不撓と里霧の小話


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・不――不撓導舟ふとうどうしゅう


・里――里霧有耶さとぎりゆうか



 ――――――――――――――――――――――――――――――――



不「今日は随分と穏やかな日ですこと」

里「行事企画書とか、その他のことも昨日、全部やっちゃったしね」

不「たまにあるんだよな〜、なにもない日が」

里「こういうとき何するの? 帰るの?」

不「帰れないんだよな、残念ながら。ほら、だって急に用事が舞い込むかもしれないだろ?」

里「そのために待機していないといけないってことね」

不「まあ、別に帰っても問題ないんだけど」

里「だけど?」

不「翌日にあれやって〜、これやって〜、ってなってることあるんだよな」

里「もしかして『昨日、生徒会室に来たんだけどいなかったんですよ〜』みたいな?」

不「そう。その日にやっとけばよかったものを翌日に持ち越して死にそうになる」

里「だから――」

不「――帰れない」

里「なるほどね」



      〜数分経過〜



里「ふと思ったんだけど、私が生徒会に入る前って、こういう時間なにしてたの?」

不「そこの棚に本とかボードゲームとか置いてあるから、それで時間潰してる」

里「え、ボードゲーム……一人でやってるの?」

不「待て、なんだその憐れむ視線は……」

里「それはそれとして、一人でできるものなの?」

不「チェスとかジェンガくらいだからな」

里「それじゃあ、本ってなに読んでるの?」

不「染屋からおすすめ訊いて、その中から一個選んで読んでる」

里「ジャンルは?」

不「ジャンルとか絞ってないから乱読家って感じだな」

里「あんまり本読まないから、図書館棟に行ったら選んでもらおうかな」

不「染屋も暇してるだろうから、行ってやってくれ」

里(あんたが行ってあげなさいよ!)



      〜数分後〜



不「そういえば、里霧って虫に抵抗ないの?」

里「なに? 急に」

不「この前のゴキ――――」

里「ちょっと黙ろうね♡」

不「はみをふひにふっほふは!(口に紙をつっこむな!)」

里「まあ、それはさて置き」

不「話題をすり替えられた!」

里「もうその話題には触れなくていいの!」

不「それは虫が苦手なのか、ただ単にゴキが――」

里「――――」

不「ひのほはんほ!(二度もやんの!)」

里「それはさて置き」

不「話題に触れた瞬間にタイムリープする使用なのか⁉」

里「冗談はこれくらいにするとして、まあ、できることなら触りたくないわね」

不「この学校、緑が多いとはいえ、あまり虫を見ることないからな」

里「そう考えると、この前のアレは悲惨だった……」

不「日本中のゴキ――――ふりはへんふあふはっはひはいはっは(ブリが全部集まったみたいだった)」

里「私がやっといてなんだけど、紙突っ込まれても気にせず走りきったわね……」

不「三回もやられたら、慣れもするわ!」

不「舐めるなよ、こちとら今まで一人で生徒会を回してきたんだぞ!」

里「どうしてそんな得意げ⁉」

不「口に入れただけで、行事企画書の可否がわかるレベルにまで到達したぞ!」

里「え⁉ なにそれ、キモッ!」

里「というか三回で成長しすぎじゃない⁉」

不「男子、三度紙を食さば刮目して見よ――という諺があるだろう?」

里「語呂悪いし、そんな諺ないし……」

不「冗談はさて置くとして、実際、オレもあの事件以降、ヤツを見ても何の抵抗もなくなったな」

里「あなただけ、檻の中で寝食をともにしてたものね」

不「そんな長時間じゃなかったよ? 確か五時間くらいだったよ?」

里「救出するまでが一番時間かかったよね」

不「あれはホント、死ぬかと思った……」

里「よく生きていれたわね、あの地獄みたいな空間の中で」

不「オレの生存能力は意外と高いぞ」

里「例えば?」

不「世界一高いビルを登ったりとか」

里「うん」

不「離陸する輸送機にしがみついたりとか」

里「うん?」

不「バイクに乗って崖から飛び降りたりとか」

里「あれね、それ全部トム・ク◯ーズがやってたやつね」

不「なに⁉ 先駆者がいたのか」

里「…………」

里「では、また次回の雑談でお会いしましょう、さようなら~!」

不「誰に言ってんの⁉」

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