第44話 スウェルティア
2024/2/13 少々展開が雑すぎたので、44話は後ほど大改稿します。
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ということで借金についていくつか彼女に質問……する前に、とりあえず今わかっている情報を振り返ることにした。
まず今回の借入先は公的機関ではなく、闇ギルド。ただ普通の闇ギルドとは違い、貧しいものに富を与え、一部貴族から盗みを働くいわゆる義賊的活動を行う集団。
その活動により、一部層から英雄視されている。
ギルドのリーダーを務めるのは珍しくも若い女性であり、人の全てを見透かすスキルを持つ、かなりの強者と噂されている。
ギルドの信条として、一度交わした約束を違えることはない。
──と、ここまでが以前アナさんから聞いた情報である。
その内容が間違ってないか彼女に確認すると、どうやらその通りであったようでうんと頷いた。
……よし、それじゃより詳しく知るために色々と聞いていくか。正直僕も探り探りになっちゃうけど。
「まずはまだ話に出ていない基本情報について、知ってることを聞きたいです」
その声にアナさんは再度頷くと、記憶を探るようにゆっくりと言葉にしていく。
「ギルド名は『スウェルティア』。他の闇ギルドのような荒くれ者の集団ではなく、少数精鋭で理知的な集団。メンバー全員が10代から20代の若者で構成されていて、その多くが孤児や元奴隷……と噂されています」
「噂、ですか」
アナさんは申し訳なさそうに目を伏せる。
「実はこれ以上詳しいことはわからないんです。その、まったく情報が広まらなくて。……ギルド名と、義賊集団というのは間違いないのですが、メンバーの顔や名前、あとは具体的なスキルとか、その辺りの情報も曖昧なものばかり。だからこれまでお話した情報も含めて、正直すべて正しいのかどうか……」
「謎多き闇ギルド『スウェルティア』か」
話を聞くだけで、なんだか不気味な存在である。
できればあまり関わりたくないところだが、もう関わってしまっている以上、可能な限り早く関わりを断ち切るのが最善だろう。
……となると、やっぱり闇ギルドから借りているという現状をどうにかするのが1番かね。
パッと思いつくのは、商人ギルドでお金を借りて、闇ギルド側の借金を返済してしまうことだが──
それについてアナさんに聞いてみると、どうやら彼女も僕もそこまでの大金を借りることはできないようだ。
……まぁ、これは致し方ない。まだ事業を始めて間もない僕と、長らく収入が少なく、さらには借金まで抱えているアナさんではそこまでの信用を得られてはいないのだろう。
ただそこまでの大金は無理でも、合わせて5万リル程度なら借りることが可能なようだ。
……正直焼石に水だが、どうしても他に手が無ければ借りるのも一つの手か。
そう思いつつ、僕は返済のためのもう一つの案をアナさんへと問うてみる。
「では、アナさんの知り合いに借りるというのはいかがでしょうか。以前、高ランク冒険者の知り合いが多いという話もあったので可能かなと思ったのですが……やっぱりそれは嫌ですかね?」
その案に、当然だがアナさんは苦笑を浮かべる。
「もちろんできることなら避けたいですね……ただそれ以前に、おそらくみんなそこまでの貯金はないと思います。ほら、やはり武器や防具など冒険に必要なものを揃えようと思うと、かなりのお金が必要になるので……」
「それなら──」
その後も思いついた案をいくつか挙げていくが、どうしてもピンと来るものがない。
はてさてどうしようか……と頭を悩ませていると、ここで僕はふと1つの疑問を覚えた。
「あ、そういえば毎月の返済ってどうやってるんですか?」
「基本的に待ち合わせ場所が指定されているので、そこで直接お渡ししています」
「直接……!? さすがに危険すぎません?」
「彼らのギルドに直接乗り込む訳ではないので……。あとはそれが向こうの指示である以上、私では逆らえなくて」
……かなりの手練と言われている人間の指示であれば、それを拒むのも恐ろしい。僕や彼女のような戦闘力的弱者では、従うというのが最善というわけか。
悔しくもあるが、こればかりはどうしようもないかと僕は納得する。
「……なるほど。ちなみに相手の特徴とかは?」
「毎回仮面とローブで顔や身体を隠しているので、具体的にはわかりませんが……いつも同じ方が対応してくれています。180cm近い身長と、その声からおそらくは年若い男性でしょうか」
「男……噂の通りならリーダーではない……いや、そもそも秘密主義の闇ギルドを束ねるリーダーが、そう簡単に表舞台に現れるわけがないか」
……うーん、思った以上に情報がないな。これじゃ対策のしようが、いや、そもそも僕たちにどうこうできる相手でもなさそうだからなぁ。
すっかり困り果ててしまったが、だからといってこのまま会話を終えるわけにはいかないため、僕は思いつきがてらアナさんへと問うていく。
「ちなみに今月の支払いはいつごろのご予定で?」
「実は……明日なんです」
「明日か……」
明日は水曜日。つまりまごころ、POPPYともに定休日であり──現状僕はこれといって予定がない。
……このまま質問してても、多分堂々巡りになるだけ。現状の最善なんてきっと見つからない。ならば……正直かなーり嫌だけど、こうするしかないか?
そう内心で考えながら、僕は小さな決意とともに声を上げた。
「その支払い、僕もついていってもいいですか?」
「ソースケさんも?」
「ほら、直接その場に行くことで、何かわかることがあるかもしれませんから」
その声に、今までの付き合いの中で、性格上絶対に引かないのをわかっているのか、アナさんはすぐさま頷いた。
「……わかりました。それでは明日、ソースケさんもお連れしますね」
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