第25話 スキルレベルアップと新たな力

 鎧と剣を纏ったリセアさんを見送った後、朝食をとった。

 彼女の様子だと今日はPOPPYにお客さんが来ることはないだろうと宿の手伝いを申し出ると、現状は特に任せることがないという。


 必要になったら呼んでくれるとのことなので、部屋に戻り、魔力が回復したか確認するために何となしにステータスを開くと、なにやら一つ変化している場所があった。


「……ん? 『エステ Ⅰ』ってなんだこれ」


 思いながら、そういえばアナさんのスキルに『生活魔法 V』とあったことを思い出す。


 ……つまりこれは!?


 急いでスキル『エステ』の詳細を表示するよう念じる。


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 『エステ』 Lv.1


 ・簡易なマッサージの手順が理解できる。


【効果】美肌(小)、リラックス(小)、回復(極小)


【入手可能】

 安価なマッサージオイル (リラックス極小UP)

  一般的なマッサージオイル(リラックス、美肌極小UP)

 安価なタオル


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「おお! スキルレベルが上がってる!」


 どうやらいつの間にかレベルが上がっていたようだ。


 ……それにしてもこういうのってレベルが上がった瞬間何かしらの方法でそれを知らせてくるのが普通じゃないか?


 ステータスボードなんて親切なものが存在する割に、そこら辺は不親切なんだなぁと内心で思いつつも、僕の興味はその表示内容へと向いていた。


「さて、内容はっと……」


 まずはスキルの説明文だが、ここは特に変化がないようだ。とはいえ『簡易な』とある以上、おそらくいずれかスキルレベルが上がっていく中で記載も変わってくるのだろう。


 続いて効果についてだが、どうやら美肌の効果が極小から小へと向上したようである。


 ……これならリセアさんの肌環境をより改善してあげられそうだ。


 そして効果欄で特に気になるのは新たに追加されたもう一つ。


「……回復(極小)かぁ」


 回復といえば、それこそアナさんがたびたび名を出していた回復魔法が思い浮かぶが、まさかそれに似た効果があるというのだろうか?


「マッサージをしたら怪我が治るとか? いや、さすがにそれは……」


 たとえば怪我を負って血を流している人がいたとして、その人にマッサージを施すことがあるかといえば、それはさすがにありえないだろう。というよりもそんなことしたら、むしろ怪我が悪化しそうである。


 ……ならば、病気の方を治すとか?


 当然まだ何も試したことがないため、確証を得ることはできない。しかし、もしもそうなのだとしたら、それはもはやマッサージの域を超えた効果が発生することになる。……って、いや今更か。


 ……よくよく考えなくても、たった一度のマッサージで肌環境が劇的に改善している時点で、すでにマッサージの域を超えているわ。


 だからこそ、もしもマッサージをしただけで病気が治ったとしても、それはなんらおかしなことではない……いや、おかしなことなのだけれど、スキルという規格外の力であればこうした科学で説明のつかない事柄が起きることも普通なのだろう。


「うん、そうだ。そう思うことにしよう」


 ……まじでこのままいったらどうなるんだろうと余計に不安に思いはしたが、しかし効果があればそれだけ救われる人がいるのだと、深く考えずにとりあえずマッサージに付加価値がつくことを喜ぶことにした。


 ちなみに最後の入手可能欄だが、いくら増えようとも今の魔力量では実体化しただけで魔力がゼロになる可能性があるため、確認はいったん後回しにすることにするのであった。

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