超人気インフルエンサーの裏方をしてたけど、給料が高すぎると言われて無理矢理クビにされた件。でもやっぱりお前が必要だから戻ってこいと言われたけど、新人VTuberのサポートで忙しいんでもう無理です。

tama

第一章

第1話:給料が高すぎだと言われてクビを言い渡される

 とある日の午後。都内の撮影スタジオにて。


「友瀬。お前、今日限りでクビな」

「……は?」


 その日、俺は大学からの友人であり今は仕事仲間でもある神楽秀かぐらしゅうからクビ宣告を受けた。


「いや、なんで唐突にクビにされんだよ?」

「だってお前動画編集全然してこねぇじゃん。動画ストックどれだけ溜まってると思ってんだよ? そんな役立たずなお前に毎月50万も給料払うとか高すぎんだよ」


 俺はクビにされる理由を秀に聞いてみると、どうやら俺の仕事が遅すぎる事が原因になっているようだ。


 そして秀の両隣に立っていた成瀬祐大と村本紘一も俺のクビの理由を聞いて嘲笑しながらこう言ってきた。


「はっ、いやマジでお前仕事すんの遅すぎだからな。ってか全然仕事してねぇクセに金を貰えてるってずるいだろ」

「あぁ、本当にその通りだな。全く、俺達は撮影で忙しいってのに、友瀬はいつも楽しすぎだろ。マジで仕事舐めてるとしか思えないわ」


 そんな感じで成瀬も村本も秀と一緒になって俺の事を叩き出していった。


「いやいや、俺はその撮影以外の仕事を全部やらされてるんだぞ? ってか撮影に関してだって機材搬入してるのは俺だし、現場でカメラ回してんのも俺じゃねぇかよ!」


 俺は一対三の構図で叩かれているこの状況に納得がいかず、俺は声を大きくしながらそう反論をしていった。


◇◇◇◇


 という事で俺の名前は友瀬雪兎、24歳の男だ。


 職業はネット関連の仕事をしており、今は大学の頃からの友人達と一緒にウーチューブのグループ活動をしていた。グループ名は“クルスドライブ”という。由来は特になく適当につけた名前だった。そしてメンバーは俺、神楽秀、成瀬祐大、村本紘一の四人によるグループだった。


 俺達クルスドライブは最初の頃は顔出しとかは一切せずに、仲の良い四人組によるワイワイとしたゲーム実況動画を投稿してみたり、当時爆発的に流行っていた合成音声ソフト“如月サク”の曲の歌ってみた動画を投稿してみたり、四人のオリジナルソングを作ってみたり、土日にはまったりとラジオ感覚の雑談ライブ配信をしてみたりといった感じの普通なウーチューブ活動をしていた。


 でもいつからかリーダーの秀が顔出し系のウーチューバーに切り替えようと提案してきた。他の二人はその案に賛成してきたのだけど、俺は普通に顔出しは恥ずかしいと思ったので演者として出るのは辞退した。なのでそこからは俺は裏方に徹するようになっていった。


 それでクルスドライブが顔出しユーチューバーになった後は俺を除く神楽秀、成瀬祐大、村本紘一の三人によるメインチャンネルとなっていったんだけど……まぁそれがバズリにバズったんだ。


 そのバズった理由に関しては、その当時はまだ顔出ししてるウーチューバーグループというのは数が圧倒的に少なかったので物珍しさがあったというのは大きいと思う。そして演者の三人とも滅茶苦茶カッコ良いイケメン達だったので、女性からの人気が爆発的に上がっていったのだ。


 さらに元々クルスドライブのチャンネルコンセプトとして、男子学生のバカなノリを全国に届けるというコンセプトで動画投稿を始めていたのだ。そして顔出しウーチューバーを始めてからもそのコンセプトは変わらずにやっていた。


 そのおかげで男子特有の悪ノリ系動画は同性の男子学生にも人気が出ていったのだ。という事でクルスドライブは男性にも女性にも支持されるグループへと成長していったのだ。


 そのおかげであれよあれよとチャンネル登録者が増えていき……それからはクオリティの高い動画をどんどんと求められるようになったり、企業案件の依頼が飛んできたり、オリジナル商品を作ってほしいと打診が来るようになったり、他のウーチューバーさんとのコラボをお願いされたりなどなど……これらの対応は全部俺が一人でやってきたんだぜ? だってクルスドライブには専門のスタッフなんて一人も雇ってないからな。


 しかもこれだけじゃないからな……クルスドライブの歌うオリジナルソングを作って来たのも俺だけだし、クルスドライブのウェブサイトを立ち上げたのも俺だけだし、外部のお偉いさんとの打ち合わせも俺だけだし、三人の内誰かが炎上しそうになったらその事前対応をしてきたのも俺だけだし、三人への誹謗中傷の対応も俺だけだし、長距離移動の車運転も俺だけだし、撮影機材搬入に撮影と編集も全部俺だけなんだぞ。


 他の三人は撮影する時にフラっと現場にやってきて、撮影が終わったら皆すぐに帰って自分の時間を好き勝手に楽しんでるんだからな。何で俺だけこんなにも毎日死ぬ気で仕事しなきゃいけないんだよ!!

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