ただの平凡な高校生だけど、どうやらモテなければ殺されるらしい。

月光

プロローグ

 おそらくモテたいという感情は、全男性の共通の願望であろう。

 かという僕も、モテたい。とてつもなくモテたい。いや、なんとしてもモテなくてはならないのだ。

 なぜならモテなければあの恐ろしいやつに殺されてしまうからだ。

 いっときの感情でとんでもない契約を結んでしまったと今更ながら後悔している。

         ※

 現在僕は中学3年生の春休みである。

 明日からはなんと、華の高校生生活がスタートする。

 今までも漠然とモテたいという感情はあった。しかしここ最近その願望がとても強くなった。

 きっかけが何なのかは分からない。親が見ている恋愛ドラマの影響なのか、はたまた、最近流行ってる高校生の恋愛リアティ番組に憧れているのか。

 きっかけが何であろうと、今僕の心の中にはモテたいという言葉だけが渦巻いている。

 ここで一旦僕のプロフィールを確認しよう。

 名前は水無月玲。とってもイケメン風なかっこいい名前だ。実際はというと、名前に見合わないとっても平凡な顔をしている。これまで15年間、顔がかっこいいと言われたことがない。

 年齢は15歳。

 中学校の部活は野球部だった。

 勉強も特段できるわけでなく、家から1番近くの高校に進学する。

 性格は、うーんいい方だと思う。

 しかしなんといっても冴えない。これが僕の印象を一言で表すピッタリの言葉である。

 時は1週間に遡る。

         ※

 「あーあー、あと1週間で高校生活が始まっちゃうよー。どーしよー、このままじゃ今まで通り、女の子にモテない冴えない学校生活を送ることになるんだろうなぁ。」

 今の置かれている状況を冷静に分析してみた。その結果僕の平凡な頭脳が4文字の言葉を導き出した。

 「詰んでる」

 半諦めモードで僕は家の近くの恋愛成就の神様がいると言われてる神社に来てみた。手入れもされてなくて荒れ果ててる。

 「こんな汚ったないところに神様なんて居るわけがねーよなー。」

 そう言いつつ僕は少し期待していた。

 家から握りしめてきた5円玉を賽銭箱に入れてお祈りをした。

 「高校生活モテモテになりますように。高校生活モテモテになりますように。高校生活モテモテになりますように」

 ワクワクした気持ちでお祈りをしたが、ふと我に返った時、なんだか馬鹿馬鹿しくなった。家に帰ろうと踵を返した。

 その時、後ろから小綺麗にスーツを着たお兄さん?おっさん?に声をかけられた。

 「お待ち下さい」

 「ん?誰だ。てか、さっきまでこんな人いなかったんだけど。」

 気味が悪いので無視して帰ろうとしたら、

 「今、モテたいってお祈りしていましたね。」

 そう声をかけられた。僕は驚いた。声に出さずに心の声で唱えたのにどうして分かるんだ。もしかして声に漏れてたのかなぁ。そんな事を考えながら、その小汚いおっさんに聞いてみた。

 「おっさんは神様なんですか?」

 おっさんは笑って返してきた。

 「神様?いえいえ、そんな大層な者ではありません。わたくしはは悪魔でございます。」

 この奇妙な出会いが僕のモテモテ高校生活の発端となるのであった。

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