悪神の欲

琴望(ことの)

第1話 悪神の欲

※登場キャラ詳細

うちの子プロフィールにて閲覧可能


ホイップside

「むむむ……もう少し味を濃くしたほうがいいかなぁ……んーーー…」

ぼくは今、お店の中でお菓子とケーキを作っている

もっとたくさんの人達を笑顔にさせるために、頑張っているのだ

今年もより頑張って行けるように、おまじないをかけながら……

ある程度の作業を終わらせると、ぼくはふと思い出す

「あ!!主様にお手紙書かなきゃなのだ!」

前に、お手紙について教えてもらったことがあるのだ

最近は友達であるジャックに文字を教えてもらったばかりである

まだ練習中だけど、少しでも気持ちが伝えられたらいいなぁ

そう思いながら、鉛筆と紙を持ってきて、机の上に置く

書きたいことが山ほどある

沢山友達が出来たこと

スイーツ、お菓子共に色んなものが作れるようになったこと

文字も勉強中だということ

まだまだ山ほどある

「えへへ……喜んでくれるかなぁ〜…」

ゆっくりと書いていたその時、何やら気配がした

「んー?お客様かなぁー?」

そう思いながら、お店に顔を出す

しかし、そこには当たり前だが誰もおらず、静まり返っていた

「……気のせいかなぁー…まぁいいかぁ!早く主様にお手紙書かなきゃなのだ!」

気合いを入れて、書き途中のお手紙がある場所へ向かう

ふと見ると、そこには綺麗なお姉さんが立っていた

肌は真っ黒で、不思議な雰囲気を出している

ぼくはキョトンとしながら、眺めていた

その人はぼくに気づいたのか、ニコリとしながらこっちを見つめる


「久しぶりね……おチビちゃん」


ぼくはそれを聞いて、よく分からなかった

何せ、面識がないのだから

お客さんのことであれば、全て覚えている

けれど、この人はお店に来てない

「どちら様…なのだ?」

単なる疑問を聞いてみる

すると、その人はクスクスと笑い始めた

「うふふ……そうだった。あなた私の事覚えないんだものね」

余計に頭がごちゃごちゃする

一体、この人は誰なのだろう

そう思っていると、その人はぼくに近づいてきた

「私の名前は大国主………」


"貴方を迎えに来たの"


その言葉を最後に、ぼくの意識は途切れる

机の上には、たくさん練習したであろう文字が書かれた紙と鉛筆

そして、ボロボロにされた手紙は地面に落とされていた



イグニスside

街ではより賑やかになっていた

年末というのは、本当に騒がしい

親父殿も母上も出かけておるし、妾がしっかりとしなければな……

面倒事はさっさと片せばなるまい

妾はそう思いながら、街並みを城から眺めていた

すると、聞きたくもない声が大声で聞こえ始める

「主様あああああああ!!!大変だああああああああぁぁぁ」

襖をバンっと強く開け、息を切らしながら入ってくる

「落ち着けイルビ。何をそんなに慌てておるのじゃ」

「ぜぇ……ぜぇ…あ……主様ァ!!"例の魂"が気配消えちまったぁぁああ!!」

「……それは誠か?」

妾はそう言いながら、イルビを睨む

「本当だぞ?!オイラここで嘘ついたら閻魔様に舌抜かれるッッ!」

イルビはそう言いながら、強く伝えてきた

大きく溜息をつく

「また厄介な………あやつの魂に宿す怨霊は、大悪魔共でも制御出来ぬのじゃぞ…」

妾は街並みを眺めながらそういった

元妖精であるあの怪異は、ある事をきっかけに、怨霊を宿してしまったのだが、普通の怨霊とはまた違う

人間界にいる霊媒師という職を持つもの達がいるのだろうが、そやつらでも成仏は不可能だ

人間だけでは抑えられぬ

唯一出来るとすれば、妾の傍におるもの達を行かせても良いのじゃが……

「……タルトをここに呼べ。イルビ」

「御意ッ!!」

イルビは急いでこの場を後にする

誰もいないことを確認し、廊下へ出た

妾の周りに、赤い炎を飛び交わせる

嗚呼……苛立ちが収まらぬ


新年早々、不吉じゃな



to continue.....

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悪神の欲 琴望(ことの) @kotonoignisu

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