漆黒竜と黄金竜

暗黒星雲

第1話 ティナとウルファ

 私はティナ。ティーナ・シュベルン。ちょっとぽっちゃり系の女の子です。ラグナリア神聖学園中等部魔法科一年生で、ここラグナリア皇国では珍しい人間族なのです。今日はとっても良い事と、目を背けたくなる酷い事がありました。


 先ずは良い事。私が幼年学校時代から憧れていたミリア公爵家のご令嬢のウルファ姫が何と! 私のクラスに転入してきたのです。彼女は竜神族で本体は大きな黄金の竜だと言われているんだけど、普段は可愛い女の子の姿です。中等部としてはめちゃ小柄で、色白で男の子みたいに短くしている金色のくせ毛が超可愛い。そして、キリリとした鋭い目元も超素敵。私は幼年学校時代、悪い奴に監禁されてレイプされそうになった事がある。その時、私を助けてくれてのがこのウルファ姫。それ以来、私は彼女に心酔しているのです。


 次に悪い事。私とウルファ姫の机に酷いいたずらをされた。選択授業で教室を離れていた時に、机の上にネズミやカエルの死骸を置かれていたのです。

 

 ぱっと見には凄いいじめ。

 でも私は違うと思った。

 やったヤツの目的はいじめなんかじゃない。


 公爵家のご令嬢と言えども、不祥事を起こせば問題になる。下手をすると勘当され、他家へと追いやられたりする事があるらしい。私とは無縁な上流階級のしきたり。


 つまり、ウルファ姫を激怒させて、何か事件を起こさせるように狙ってるんじゃないかと思う。具体的に何を狙っているのかはわからないけどね。


 ともかく、私は「気分が悪いから」と言って教室を出た。ウルファ姫の手を引いて。そして中庭で相談した。今回の主犯に心当たりがあるから。


 それは、幼年学校時代のあの事件の事。悪い奴が暴力で学校を支配していた。その悪い奴とは黒竜のバズズリア。体が大きくて大人でも敵わない強さで、もう悪さのし放題だった。バズズリアの手下に赤鬼と青鬼がいたんだけど、その青鬼の方が私たちのクラスの委員長をやっているグスタフ・アルヴェーンだったという訳。


 今回の嫌がらせの主犯はあの青鬼だと思うんだよね。そして他の誰かに罪を着せて、ウルファ姫がその誰かに暴力を振るうよう狙っているんじゃないかって思う。頭がキレるグスタフが相手だから気が抜けない。ウルファ姫を守るのは私の役目なんだから。

 

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