水出ほのか、十五歳。神社でサイバーフレームを拾う。……いや、サイバーフレームって何⁉
との
第1話 ……よくできたアニメだわ
小さい頃に見ていたロボットアニメをふと見返した。
動画配信サービスのランキングに上がってたのをたまたま見つけ、懐かしさで見始めたのだが、見出してからあっという間に三時間が経過した。全十一話のアニメだが、残すところあと三話となった。明日も朝から学校だ。寝ないといけないと理性で考える頭とは裏腹に、ほのかの目は画面に夢中になっている。一向に停止ボタンを押す手は動かない。
『空想戦記セカンドグレー』
七年前、ほのかが八歳の頃に木曜日の十六時から毎週やっていたアニメ。学校から帰るとちょうどタイミングよくテレビで放映されていたため、毎週の楽しみとなっていた。スーパーマーケットで母親に、主人公が乗っていた機体の玩具をねだることもあった。
物語の主人公は冴えない少年で、いつも自分の世界にこもり絵を描いていた。ある日、自分の考えたロボットの落書きを描いたら、そのロボットが具現化し、現実世界を乗っ取ろうとする他の落書きを倒していくという話だ。
当時は敵をバサバサと倒す主人公がカッコいい、必殺技が派手だとかいう見方しかしていなかったが、高校生になった今、見返してみるとなかなかよくできたアニメだと思った。
人間に敵対する反対勢力の落書きたちは、人間のエゴにより好き勝手に描かれ、心を持ってしまった挙句、一方的に消されそうになったため、その自衛の手段として、人間に抵抗した。子供の頃は悪い奴としか見ていなかった敵の落書きたちにも言い分があり、今なら納得できた。単純な勧善懲悪ものではなく、複雑なドラマが背景にあり、それが理解できる。
そして七年という月日を経ても全く色あせないその機体の格好良さは華の女子高生となった今のほのかの心にも突き刺さる。まるで初見のように夢中になって夜中まで見てしまった。
――思えば、これからはまったんだよなぁ。
同級生の女の子はこの後、変身する魔法少女や、現実のアイドルに夢中になっていったが、ほのかの心はロボットに夢中だった。主義主張を守り抜くため、宇宙空間で戦うリアルな作品や、地底に欲し込められた人間が、地上を取り戻すため熱い力で戦う熱血作品など、様々な種類のロボットアニメにはまっていった。
それは中学にあがっても変わらなかった。ただ、みんなの前で声高らかに話すことはなくなった。友達の前でぼろが出ないようにおしゃれに気も使ったし、話を合わせるために人並みにアイドルソングなども聞いた。そういうものに女の子がはまっているのは異質だと、ほのか自身が自衛のために理解していたからだ。
でも、面白いものは面白い。それは高校生になった今でも変わらない。
「はぁぁぁ! やっぱ面白いなぁ……よくできたアニメだわ」
ふむふむと一人で口に手を当て、評論家の真似事をする。眠気はどんどん増していくが、次の話をみたいという欲望に勝てず、ほのかは九話目のオープニングを見つめた。
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