第22話 エンシェントドラゴンロード『シュオール』

「うーん、家畜かぁ……。”バロメッツ”は大量生産は行うことは成功したけど……。これだけじゃ飽きるよねぇ。」


 食べ物となれば農作物だけではなくやはり「肉」でありそして家畜である。

 実際、Dの保存凍結データ内には牛や馬、犬、鶏なども保存されている。これらを解凍して育てればいいのだが、これは他次元の様々な種子や種を保管する「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」と同じようなコンセプトで凍結保存した存在なのである。

 種の保存のためのそれらを解凍させてこの世界の人間の肉用にするには、流石の彼女もあまりいい気はしなかったらしい。植物と同じく遺伝情報を読み取って複製作成……と行きたい所だが、回復系の魔術の応用で取り組んでいてもそれでも中々上手くいっていないのが実情だ。

 そのために生み出したのは植物でありながら動物でもあるという「バロメッツ」である。だが、バロメッツの大量生産は大量の羊肉と羊毛……緬毛、そして羊乳の供給に成功していた。だが、いかに大量であっても日本人には羊肉だけではきついものがある。(とはいうものの、いざとなったらそんな贅沢は言っていられないが)

 そして、今では羊乳から加工してチーズやヨーグルトなども作り出そうという研究も行っている。さらに肉を増やすためにLV1の最低限のグリフォンや魔獣系の怪物を作り出して肉にするアイデアも生まれてはいるが、やはりその凶暴性は家畜としては問題があるといってもいい。


「岩塩の概念もあるからそこから岩塩……塩を生み出す事もできたけどね~。やっぱり有機生命体たちに満足してもらうための居住空間を作るとかめんどいな~。やっぱり外界から色々仕入れるのが一番楽かなぁ。でもやっぱり大量に仕入れたら絶対にばれるしな~。うーん……。」


 そういいながらDは腕を組んで色々考えこむ。岩塩だけではなく、ダンジョンと鉱物資源は非常に相性が良い。その点食糧よりも遥かに鉱物資源を生み出すのは容易い。

 居住空間である迷宮都市階層、食料生産用の農作物生産用階層、家畜用の食肉生産用階層、そして鉱物資源採取階層なども作成している。

 鉱物資源階層から農作物生産用階層に鉱毒などが流れ込んできたらシャレにならないので、それぞれの階層は完全に次元的に遮断されるような結界が張られており、それぞれの階層の影響が他の階層に及ぶことはない。

 しかも念のためストーンゴーレムたちが様々な採掘資源を掘り出す際に「水浄化」や「土浄化」などを行う事によって鉱毒を浄化させているので問題はないだろう。


「まあ実際、その気になれば金塊はどんどん生み出せるんだよね~。私からしてみたら金なんてただの石ころだし……。人間は何で金とか銀とかこんな石ころ程度を後生大事にありがたがるのが全然分かんないんだけど?人類滅亡RTAやるなら金塊を無限生産して人類社会に放り込むだけで人類経済崩壊!それを高笑いしながら人類世界に侵攻を仕掛ければかなり追い詰める自信あるよ私。……まあ、相棒やプリちゃんが悲しむからやらないだけだし。めんどくさいしね~。」


Dからしたら金銀など文字通りの「ただの石ころ」程度の価値しかない。その気になれば無限量産して莫大な量の金銀を人類社会に投入して文字通り「ただの石ころ」程度の価値に変えて経済を崩壊する事も可能だろう。

もしも瑞樹というストッパーがいなければ間違いなくやって人類社会を滅茶苦茶にしていたであろう事は間違いない。やらないのは単純に面倒くさいからである。


「うーん、やっぱりアレかぁ……。『切り札』を解凍して私の手足を増やすかぁ……。いい感じに私の因子を注入したし……やってみるかぁ。」


 Dがぱちん、と指を鳴らすとその床から以前奪い取ってきたダンジョンコアが収まっていた。そこに、Dは架空キーボードを展開すると、凄まじい勢いでキーボードを叩き出し猛烈なデータをダンジョンコアに注入していく。

 今まで光が消えかけていたダンジョンコアは、まるで苦しむように猛烈な光を放ちだす。これはいわば末期の叫びと同じだ。ほぼ完全に洗脳……内部データを消去して自分の因子情報を注入して、さらに超圧縮された情報データをダンジョンコアへと叩き込んでそのデータを内部で解凍状態にしたのである。


「よし!これでイケルはず!!出でよ!エンシェントドラゴンロード『シュオール』!!我が声に答え、その圧縮情報を解凍せよ!!ダンジョンコアを媒体にしてその肉体を展開せよ!!」


 その彼女の声と共に、ダンジョンコアを中心にしてバキバキと竜の肉体が実体化・構築化されている。ダンジョンコアを心臓として圧縮された情報が解凍され、およそ7mほどの巨大な竜の肉体が形成されていく。

 その力強い竜の肉体が形成されていく中で、翼を広げて上に向けて吠える竜……エンシェントドラゴンの中でも最上位クラスであるロードクラスのその姿は、まさに神々しいものだった。


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 シュオールは他の自分の小説のキャラですが、スターシステムとして登場させました。

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