第11話 他ダンジョン攻略の準備
とりあえず魔物使役スキルは身に着けさせたし、LVも(彼女の基準では微小だが)上げさせることはできた。だが、それでもなおDは瑞樹に対して色々調べるために、ダンジョンの壁からにょろにょろとはみ出してきたケーブル?に似た縄状の物体が、瑞樹の体のあちこちにペタペタと張り付いていく。
そこから得られた身体データを解析・データ化して仮想ディスプレイの画像に投影した物を見ながらDはううむ、と声を上げる。
「うーん、やっぱり有機生命体って体が脆すぎるよねぇ。たかが体に穴が開いたり手足が失ったりする程度で生命活動を停止するとか脆すぎるよ~。もう身体改造やっておく?でも私も人間の体もよくわからないしなぁ。良くわからない状態で相棒の体をいじるのもなぁ……。」
Dとしてはこんな所で重要な存在である瑞樹を失いたくはない。許されるのなら平気で人体改造を行って人間外の存在へと変えればLVをガンガン突っ込んでも問題ない存在になる。人間から離れればたちまち強くなれるのは確実なのである。だが、人間から離れることに対して、瑞樹は明確にNO!と答えてそれを拒否した。
「あ、そうだ。身体強化とかまずいのならええと……。」
そこでDは物理法則を無視しながら虚空に対して「穴」を開けるとそこからごそごそと瓶を取り出してそれを瑞樹に対して放り投げる。
「?これは一体?」
「完全万能回復薬エリクサー!!それ飲むだけで肉体は全快するからピンチの時に飲んでね!死んでなきゃ何とでもなるよ!念のため死者蘇生薬も渡しておくからゴーレムあたりに飲ませるようにしておいてね!!」
その小瓶を受け取った瑞樹は冒険者ギルドに持ち込めば、その天文級の価格がつくであろうアイテムを無造作に投げつけられて、おもわずおっとっと、と小瓶を落としそうになってしまう。
そんな慌てている彼を他所に、Dはさらに何個もの瓶をぽいぽいと無造作に瑞樹に対して投げつけてくる。そんな超貴重な薬をぽいぽい投げつけてくるDに対して姫奈は思わず悲鳴を上げる。
「ち、ちょっと待ってDちゃん!それ一個で国家がひっくり返るレベルの奴ぅうう!!そんなのあると知ったら絶対悪い奴らが狙ってくるって!!多少の傷なら私が回復するから落ち着いてぇえええ!!LVが低い人間にそんなの飲ませたら過剰回復でむしろ死亡する奴ぅうう!!」
回復魔術について専門家である姫奈は慌ててDを止めに入った。エリクサーは確かに万能薬ではあるが、超高級な万能薬であるため、低いレベルでガブ飲みすれば当然それなりの反動がきてしまうのは当然である。
こんな高級薬を初心者にぽんぽんと投げ与えようとするDが異常であると言わざるを得ない状況だ。
「ゴミカス人類どもと違って相棒は私の相棒なんだよ!そんな簡単に死なれたら私が困るんだからこれくらい当然!!赤字?こんな程度で相棒やプリちゃんを救えるなら安いものでしょ!言っておくけどこれでもダメなら私相棒やプリちゃんをエンシェントリッチあたりに転生させるからね!」
ぷんぷん!と自分自身の口でそう言いながら、力説するDだったが、姫奈に説得させて何とか落ち着いた彼女は、あーあと言いながら後頭部に手を当てながらうーんと背伸びをした。
「うーん過剰回復とかあるとか有機生命体ってめんどくさいな~。バーンと最高級の回復薬飲ましておけばそれでいい世界ならいいのに。
体に穴が開けば生命活動を停止するし、過剰回復しても生命活動を停止するしめんどくさいなぁ全くもう。相棒とプリちゃんでなかったらここまでしないんだからね!
まあ専門家のプリちゃんが言うのなら仕方ないかぁ。色々な効果の傷薬を渡しておくからプリちゃんにお任せしようか。」
やれやれ、とDはその綺麗な銀髪のロングヘアーを乱暴にかき上げながらそう呟く。ダンジョンコアの分身である彼女はその本質として有機生命体とはかけ離れた存在である。性質としてはケイ素生命体にかなり近い存在が人間たちとコンタクトをとるために生み出したインタフェースだ。そんな彼女からしたら生命体、特に人間はなかなか身体的にも精神的にも理解しがたい存在らしい。
まあ、それはそれとして、他のダンジョンを攻略して奪い取れば、Dの力も増していき、その内部の財宝も自分が手に入れることができる。お互いウィンウィンである。
「よし、それじゃ注意点が分かっただろうから、これで他のダンジョンを攻略してその迷宮のダンジョンコアを奪ってきてほしいな。
ダンジョンコアを奪い取れば私の力もガンガン増えていく!!ガンガン攻略してガンガン奪い取っていこうね!!」
あっ、これ蛮族戦法って奴だ……と思わず瑞樹は心の中で呟いた。
傍目から見たら兵士をダンジョンに差し向けてダンジョンを奪い取るという形にはなるが、瑞樹からしたら文句はない。
今までただ荷物持ち、寄生虫と散々バカにされていた彼がダンジョン攻略のための力をきちんと与えてくれる(しかも過剰に!)してくれるのだから文句はない。
「私のこのやり方も私のダンジョン内部のリソースを相棒に回してるだけだからなぁ。総合的に見れば大した代わりがない訳。
けど!他のダンジョンを攻略してそのリソース並びにリソース管理しているダンジョンコアを奪い取ってくれば!そのリソースを丸ごと私が取り込んでさらに強大になれる!!まあ普段の冒険者稼業と同じって訳!!冒険者が財宝を手にするように、私の場合ダンジョン自体を私のリソースにできる。相棒もLVも上がるし、私もリソースを増し増しにしてより幅広い行動が取れる。迷宮の財宝もそっちに好きにしていいしね。まさにウィンウィンだよ!!」
ふんすふんす、とDは拳を握りしめながら力説する。D自身にしても瑞樹たちは貴重な外界の貴重な情報を持ってくれる人物であり、外界で活躍してくれる貴重な戦力であり、こんな序盤で絶対に失いたくない人材である。だが、それでもダンジョン攻略のためには彼らの力を借りなくてはならないのがジレンマである。
D自身は外界では長時間動けないが、他ダンジョン内部ならば長時間動けるのでは?とふと思った瑞樹はその疑問について聞いてみる。
「え?私が直接ダンジョン攻略をしろ?……いけなくはないけどさぁ……。
ぶっちゃけめっちゃ効率が悪い!!私が敵対ダンジョン内に行ったら完全に敵・遺物扱いだからなぁ……。まだこの世界に馴染んでない上に敵対ダンジョン内で補給を絶たれたらガンガン存在力が低下していく可能性があるし……。あんまりやりたくないなぁ。」
「その反面!相棒ならダンジョンコアも「普通の冒険者」と認識するから普通に攻略してダンジョンコアをどうにかできる!私たちからしたらアサシンみたいな物だよ~。クール&スマートにズバッと解決!!もちろん全力でバックアップするよ!!そもそもこういう使い魔……というか使役魔を作ってるのもその関係だしね。」
まあそんな訳でよろしくね相棒!とわははと笑いながら気軽に肩を叩いてくる彼女に対して、瑞樹は深いため息をついた。
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