第24話 波乱の魔力測定!?

 魔力測定もとい身体測定の日はすぐにでも訪れ、その日、クーヤはラフな格好になって学校の廊下を歩いていました。今から身体測定に向かうようですね。


 「ねぇあの子って噂の?」

 「そうよ。というか、なんかあの子の見てたら変な気持ちになってくるんだけど」

 「え、それ私も………」


 制服で隠れていたクーヤの素肌やらなんやらが見えてしまい、廊下ですれ違った上級生の人たちをドキドキとさせています。変な性癖を拗らせなければ良いのですが。

 そんな当の本人は特に気が付く事なく、わくわくしながら指定された教室に向かっていました。


 「身長とか体重とか測るんだよね。楽しみだなー!」


 クーヤも男の子。出来るだけ身長が伸びていたらいいな、と思っていました。他の子と比べて、クーヤは小柄で身長も一番小さかったのです。

 魔族と人間ではそもそも体格が違います。ですが、クーヤは人の同年代の子たちと比べてもやっぱり小さいようですね。


 「クーヤはそのままのクーヤが最高よ!」

 「小さくて可愛いのはステータスなの」


 しかし、よりにもよって身内にクーヤの身長が低いのを良しとする人たちがいました。廊下の角からクーヤの事を見守っているシアとミールです。おかしいですね。彼女たちも測定があるはずですが。


 「お前たち、さぼって何してるんだ」


 そんな二人の後ろから呆れた声をかけたのはフィリオでした。紙とペンを持っている事からも、記録係をしているようですね。


 「違うの!たまたま早く終わったの!」

 「そうよ!それでたまたま歩いてたらクーヤがいたのよ!」


 そういうそっちはどうなの!と逆に詰め寄られましたが、ひょいっと紙とペンを持ち上げて記録係をしていたのをアピールします。ここに来たのも、本当に偶然です。


 「でもまぁ、お前たちの気持ちもわかるけどな………」

 「そうよね!クーヤはちっちゃいのがベストよね!」


 ちっちゃいままがいいって、大きくなりたいと思ってるクーヤが普通に可哀そうだろ、と思っていましたが猛烈に反論される未来が見えていたので、賢いフィリオは口に出しませんでした。


 「いや、そっちじゃない。魔力測定の方だ」

 「何か問題があるなの?」


 ミールは不思議そうにしていますが、人間は魔族と違って魔力が低い傾向にあります。子どもはそういう違いには敏感ですから、それでいじめられないか心配なのです。

 フィリオはシアたちにそう説明しました。


 (うちの家族は凶暴なのが多いからな。クーヤがいじめられたら何をするかわからない)


 くいっ、と眼鏡を上げながらフィリオはそう思っていました。なんでしょう。魔王ファミリーは自分の事が見えない人が多いんでしょうか。



 さて、そんなわけでコソコソとクーヤの後ろをついて回る三人の影がありました。立派なストーカー行為です。


 「結局、リオ兄も付いてくるんじゃない」

 「お前たちが変な事をしないか見張る為だ」

 「とか言いつつ、クーヤの事が気になっているに違いないの」


 フィリオは黙って何も言いませんでした。図星のようです。


 「二人とも、こっちこっち!」


 シアが手招きして早く早く、と急かしています。シアがいる教室の入り口に二人も向かいました。そーっと三人が中を覗くと、新入生たちがたった今、身体測定を始めたようです。


 「うーん、やっぱりクーヤが一番可愛いわ!」

 「当然なの」


 弟バカな二人は置いておいて、フィリオも中の様子を伺います。クーヤは測定を待っている間、近くの子と仲良く話をしているようです。


 (………よかった。クーヤはひとりぼっちではないみたいだ)


 人間だから、といって除け者にされていないかフィリオは心配していました。クーヤは家では明るく学校の話題を話してくれていましたが、それがこちらを気遣っての事かもしれません。実際に自分の目で見て、フィリオはほっと胸を撫で下ろしました。


 (とはいえ、まだこれからだ)


 肝心なのは魔力測定の方です。クーヤクーヤとうるさい二人を連れて、フィリオはこの場を離れていきました。

 そんなわけで、三人は上手くクーヤにも他の人たちに見つからないようにストーキングしていたわけですが、魔力測定だけは隠れて見るのは難しそうです。


 (どこから見てもすぐばれてしまうが、どうするんだ二人とも)


 魔力測定は体育館で行われ、身を隠す場所がありません。頭が良いフィリオでも解決策はすぐには見つかりませんでした。

 しかし、常識で考えていたフィリオにはわからなくとも、シアたちには答えがわかっていました。


 「隠れる所がないなら、隠れなきゃいいのよ!」


 ででーん!と堂々と魔力を調べるオーブの隣にシアは立っています。逆側には当然のようにミールがいました。

 ちなみに今は新入生たちが測定する時間なので、この場には先生と新入生たちしかいませんでした。ものすごく目立っています。クーヤも突然登場した姉たちにびっくりしています。


 (あいつら………!呑気に笑顔でクーヤに手を振ってるんじゃない!僕まで出て行ったら更に混乱するだろうし、ここは先生たちに任せるしかないか………?)


 フィリオは体育館に入り口に隠れてそんなことを思っていましたが、魔力測定をするのは担任と決まっていて、クーヤの担任となっているのは経験の浅いリザ先生です。

 さて、あの新人先生にこの二人を上手く抑える事が出来るのでしょうか?

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