ストーリー、執筆裏話



 

 以下ストーリー&執筆に纏わる裏話です。




■構想の根っこ〜執筆開始まで〜


 このお話、略してX15エクイコは、元々漫画「ファブル」の影響を受けて「二重生活を送る暗殺者ってかっこいいなぁ」「よし、これを題材にして10万字書こう!」と決めたものです。


 で、元は完全にオリジナル(個人の存在)として「死神」を考えていたのですが、ふと「あれ、この設定犬レボ(私の別作品)の設定を流用出来るなぁ」と思いついてしまい。結果、そちらで既に考えてあった「女王にかしずく3つの一族」という設定の中から「影の一族」を借りることにしました。


 影の一族に関しては別作品そちらの方で「表に出てこない」「女王のめいで汚い仕事を一手に引き受ける」という設定だけが決まっていたので、そこから「3つの家を支配する当主」「『一族』と呼べるほどたくさんの血縁」という設定を生やしていって。


 最終的に、私がX15執筆にあたって最初にした作業は、主人公、ヒロイン候補二人と影の一族全員……総勢17名のキャラクターを設定することでした。


 なお、本当にここだけの話ですが、最初のメインヒロインはフランシーヌではなくティナの予定でした。もしも作中、彼女だけ妙にキャラが立っているなぁと思われてたら、まぁそういうことです。最初の最初、ルーファスとくっつく(かも)という予定でほぼ最初に生まれたのがこのコだったので。

 で、フランシーヌはむしろきっかり「敵側」として出す予定でした。


 しかし、信頼できる友人にざっとメインキャラ三人と大元の設定を見せて、「この設定でラブコメ、王道ファンタジー、サスペンス他お話は色々考えられるけど、君はどれが読みたい?」と聞いたところ、「ティナは可愛くない、サスペンスが読みたい」というオーダーを受けたので、急遽「フランシーヌをヒロインに据えたサスペンス」という形で話を詰めていくことにしました。


 正直、設定からやれることが多すぎて……ティナのやることに巻き込まれて魔王退治をさせられる(現行に近い形)、三角関係でラブコメ、はたまたシリアスサスペンス、もっとかっ飛んで日常系……とか色々考えてましたが、私をよく理解して作品を好きになってくれる友人がそう言うなら、よしやったろうと。


 個人的にはティナのチャキチャキした感じ好きだったんですけどね。ぷちザマァしやすそうで可愛い……というのも含めて。でも、今こうして完結まで書いてみると、まぁ……フランシーヌ可愛いよね……私がヒロインにしたいと思ってキャラクター造形してるわけだから……なんて……。


 ロリババア大好きなんですよね……ロリータな見た目でお姉さん、たまんないなって……。


 そんなこんなで、まずルーファスがいて。ヒロインにフランシーヌを据えて。あと、最後に王宮の話にする、まで考えたから、サポート(サブ)キャラはリオン(エメリヒ)とサマンサだなとあたりをつけ。

 バーーーーッとシナリオを仮組みしました。




■シナリオ初期案、構想と現実……

 


 初期の初期の構想段階では、実はラッセルは作中で復活させる予定が毛頭なく、少なくとも表舞台では死んだことになる予定でした。

 なのでルーファスは当初「最初から遺体奪還作戦」ではなく「一族勢揃いの葬式」に呼ばれる予定だったのですが。それは登場キャラクター多すぎだな、さすがにアカン。と切り捨てて、とにかくさっきの4人をメインにして立てる方向性に絞りました。


 そしてその後、最初の一ヶ月を使ってなんとか話を考えたのですが、出来たプロットが16話悲願(ソロモン撃破)までで。

 あとの流れは


 ・ダドリーが女王を殺し、この国をぶっ壊すために魔王復活を目論んでいる。

  こいつとは2回戦う。

 ・サマンサが禁書絡みで「知りすぎてしまい」、ダドリーに殺されかける→物語上は退場

 ・少なくともゲーアハルトが、そしてあるいはプラスマールヴァラの姉妹が一行の支援者として力を貸してくれる

 ・ラストでダドリーを倒す際、なんらかの形で魔王と戦うことになり、最後は一族の総力戦

 ・ラッセルの死体救出はするとしてもギリギリの方が映えるんじゃないかな


 ということしか考えてなくて。

 さぁどうする。本編書きながら残りのシナリオ整えないとならんという、チキチキレースが始まってしまいました。

 


 

■光と影の出会い(第01話〜05話)




 さて、ここからはシナリオごとの裏話。

 まずはパトリック(ルーファス)とフランシーヌの出会いとバディを組むまで編です。


 フランシーヌは当初敵寄りの設定だったこともあり、「とにかく正義感が強く、仕事に真面目なバリキャリ系。それ故王都を震撼させる死神が許せず、死ぬ気で追いかけている」というキャラづけでした。


 しかし、この子を突き詰めていくと「たかだか狂った濃度とはいえ、正義感のみでここまで突き進めるもんか?」と思ってしまい。何か死神に個人的な思い入れがあるかもしれない……ということで、あとから「姉を殺された」設定を追加して。最終的に「どシスコンだったため、職業もおそろだった」という愛くるしい過去にしておきました(?)。


 大好きなお姉ちゃんを殺されたと思い込んでたら、なりふりかまわず追いかけてくるよね、仕方ないね。


 そこから、いかにフランシーヌを「基本敵側で、心を許すことは叶わないけど、ちょっと憎めない、主人公から見て可愛く見える」女の子にするか、描写のバランスに苦心しました。


 1話の登場はだいぶトンチキなんですけど、2話で楽しく一緒に飲み食いして、3話で共にピンチを乗り越えて、4話で彼女の本心を知り、さぁ5話で本題だ。という流れに出来た……かな……。


 主人公ルーファスにとっては、「真実を知りたい知りたくない」という揺らぎ=謎=サスペンス要素を残したまま、物語大筋の謎(=ラッセルの死体の行方)判明……という重ね方をしたつもりです。


 個人的には2話の両親との食事シーン、もっと長々わいわいさせたかったんですけど、尺の都合上泣く泣くカットしました……。食事シーン好きなんだよ…………。



 

■いざ、潜入(第06話〜11話)




 この辺のシナリオは、このお話のサスペンス要素を全力で詰め込んだ下りになります。

 

 個人的には「兄の死体を探して東奔西走する」という題材が、わりと毒々しくもファンタジー世界故、一抹の希望と爽やかさを孕んでいてちょっと好きな空気です。


 ただ、題材はともかく「話として面白いか」は大分怪しいかな、と作者自身思うところがありまして……


 情報を集め、各々公開し、推理し次に生かすというプロセスが話の核でありつつ、文章として極力タイトになるよう、かなりあれこれ頭を捻りました。


 ルーファス(パトリック)含む四人は毎晩情報交換報告会をやるわけですが、報告会だけじゃ満足出来ないだろう方のためにアクション回を盛り込んでみたり……あえてパトリックとフランシーヌの会話を挟んでみたり……


 その狙いがきちんと当たってたら嬉しい、のですけどね。本当はパトリックとフランシーヌの会話、もっとあったんですよ。朝起きた時、夜寝る時、たくさん会話させる予定でした。全部バッサリカットです。


 そんな中最初の敵、ブルック戦は主人公が初めて主体的に戦う場面でもあり、作者にとって序盤最大のわくわくポイントでした。


 当初はフランシーヌに小言を言われつつ、彼の魔法でさっさか倒してしまう……というシナリオを考えていましたが、いざ当日の彼らの行動を書き出してみると、丸腰で城を歩き回る兵士というのもおかしいな、と思いつき、剣を持ち歩く→剣でのアクションをさせる、という流れに変更しました。


 後々の彼の戦いを見ていただければわかりますが、彼は本当に「剣での戦いが得意な訳では無い」、しかしその辺の人よりよっぽど強いので、そのちぐはぐな感じが面白く出来たかなと思います。


 一方、10話掃除〜11話疑惑にてついにダドリー(黒幕)と初対面……という下りは、会話劇を軸にしつつ、ルーファスが真の姿を取り戻した上でかなり緊迫した、良い場面だったと思います。

 日数と時間をかけ、必要な情報を集めて回るだけだった捜査期間前半を抜けて、徐々に面白くなってきた、と思ってもらえてたらいいな。


 なお、11話疑惑は、リオンとサマンサの普段の様子を見て欲しくてあえて長めに尺を取りました。弟ルーファスにはきつく当たるリオンですが、姉サマンサには心底めろめろで、弟ながら「お姉ちゃんは絶対俺が守る!」といういじらしい意思を秘めた人だというのを知って欲しいなと。


 彼がシスコンなのはひとえに「女好き」「突然出来た聖母の如き美人姉」というのが大きくて、つまり単純なだけなのですが、いかに弟の彼にとって「優しいお姉ちゃん」という幻想が大きかったかについては、後々短編の形で紹介出来たらいいなと思います。



 

■銀髪の魔法使い、ソロモン(第12話〜17話)




 さて、本格的に面白い所に入ってきました。当初から「謎の人」風に登場させ、「フランシーヌの仇敵である死神とどう繋がっているのか」「彼を軸として、フランシーヌはルーファスたちと敵対するのか」という揺らぎの原因であったソロモンですが……


 なぁに。ラッセル殺した本人だし、フランシーヌの仇その人でした。


 ソロモンは何者なのか、そしてどんな能力(=魔法の属性)を持っていて、どう倒すのかという下りは、この物語前半の大ボス、ラストイベントとして、めちゃくちゃ悩んだしかなり作り込みました。


 詳しくはキャラ紹介、そして魔法の設定についてのページで語りますが、結論ソロモンは瞬間移動が使えません。けど、そうであるように見えていたのは何故か。「そう見える別の魔法を使っていたからだ」という。


 この世界独特のルールで、この世界でしか出来ない推理体験をしてもらえたらいいな、というのがソロモン周りのシナリオの肝です。


 そこから、ルーファスは死神の姿(彼本来の姿)に堂々と変身する言い訳をゲット出来たし、フランシーヌはようやく満足行く仇討ちが出来た。奇しくも最初に作ったプロットの終わりである第16話悲願は、お話全体の折り返しポイントとなりました。


 フランシーヌが彼女個人の目標を達成した辺りで、四人は新たな問題を見つけてそちらに奔走する。フランシーヌとルーファスの心は迷うことなく、同じ敵に向かって意思を一つに出来るようになる。


 さてここからが、この事件の真に恐ろしいところ……という辺りで、えと、


 プロットマジでどうしよう!?




■白髪の魔法使い、クロウリー(第18話〜23話)




 正直な話。本編を仕上げてアップする傍ら、ずっとプロットを書き続けてはいたのですが、どうしよう……最初の段階で「全25話」を想定してたのに、ソロモン撃破の時点で16話。あと9話でサマンサをピンチにしてダドリーと2回戦って魔王戦してエピローグ書いて……


 話数が圧倒的に足りない!!


 そうじゃなくても、捜索前半のパートは会話ばかりで退屈かなと思ったので、本当はサマンサが個人で行動する場面を作り、聖職者の夫越しに情報を得て「禁書が盗まれた、ですって?! 一体誰が……!」とやる予定だったのをバッサリカットしたのですよね。そこからさらに尺を削る……だと…………。


 そんなこんなで、魔王の入った禁書という存在、随分突然出すことになってしまいました。こんなに突然出すことになるってわかってたら、第一話の水晶の話くらい先からさり気なく仕込んでおいたのに……(冒険者たちと水晶の下りは、最初からわかって情報を盛り込みました)。


 ましてや、サマンサヤバい頑張ってくれたじゃん。ここまで身体を張ってゲットした禁書、おめおめダドリーに渡すわけないよな……瞬間転移使える一族だし、遠おおおおくに隠せば絶対ダドリー見つけられないよな…………


 

 

 え、どうする? ストーリー破綻しちゃうぞこれ??


 

 

 そこで、ふと頭に浮かんだのがクロウリーを活躍させる現行のシナリオでした。

 

  


 元々クロウリーは、


 ・ダドリーも一応馬鹿じゃないし、テロ実行前に事前の根回しくらいめちゃくちゃやるだろう→

 

 ・なら女王配下の3つの一族は先から沈黙させとくに限る。攻撃専門の矛の一族は、戦争起こせば簡単におびき出せる。

 

 影の一族は裏でねちねちめんどくせーけど、どうせ死神が手先なんだろうから、呼び出して殺せばいいだろう(これで犠牲になったのがラッセル)(残念、死神は一人じゃなかった! というのがダドリーの誤算)。

 

 さて、残るは防御専門の盾の一族だけど……どんなに策を弄しても、女王のそばから完全に引き剥がすのは無理だろう。じゃあ、ルーファスたち「影の一族」がソロモンとダドリーを相手取ってる間に、盾の一族を殲滅させるダドリーサイドの人間がもう一人いるだろう。


 以上のことから、「ソロモン以外のあちら側」は必ず居る、と思って、決めているキャラでした。


 で、今後ルーファスたちがダドリーと戦う時、彼らの戦いの裏でゲーアハルトに仕留めてもらう(事実のみ本編で披露する)、と思っていた彼を。本編で使おう。唐突だけど決めた。


 つまり、クロウリーはこの辺りを書くにあたり、急遽生み出された〝ぽっと出〟の存在なのですよね。


 ですが、禁書を守るためにルーファスたちは城を出て家まで引くだろう→盾の一族を一人で殺せる実力者なら、あとダドリー側の事情を考えれば、余裕で追いかけてくるだろう→そこまでして追いかけてきて、さぁ禁書を奪うぞとなったら相手は何をするか?


 死にものぐるいでなんでもするだろう。


 という連想ゲームから、当初白紙だったクロウリーのキャラクターがトントン拍子に決まりました。寡黙なソロモンと対極的な、お喋りでお調子者で、めちゃくちゃ残虐。


 ここまで思いついたら、クロウリーを倒すまでのシナリオは一気に決まりました。



 その結果、ゲーアハルトは「ただ城に現れて助けてくれるおじさん」ではなくなり、家族を巻き込み、苦悩し、それでも戦い続ける誇り高き貴族魔法使い。というパーソナリティが一層強まり。


 マールヴァラの姉妹も、ネームドモブ状態でさらっと出そうと思っていたのが、片や全身焼かれても不屈の精神を見せつけるパワフルガールに、片や死体をもらってウキウキするちょっとサイコな女の子になりました。


 この姉妹の人となりは元々姉ハイデマリーが勝ち気、妹イルムヒルデが大人しい子、というのは決めてましたが、これまためちゃくちゃキャラたっちゃったなぁ…………。


 おかげさまで、ぽっと出かつ苦肉の策で生み出したソロモン戦後のシナリオは、めちゃくちゃ盛り上がって個人的に満足です。


 一応、クロウリーは途中思い直し、ダドリー戦一回目のサポート(後衛)で出そうかな、じゃあ戦いのキーとなる属性は分裂で、本体をゲーアハルトに叩いてもらおう。という青写真こそうっすらありましたが。


 ここまで派手で熱い戦いになるなんて、思ってなかったよ。リオンとルーファスの犬猿共闘バトルはやろうと思ってたけど。激熱じゃん。ゲーアハルトの雪辱戦も、娘をあんなにされた報い!! ということで、超楽しく書けました。




■黒幕、そして災厄(24話〜29話)




 さて、物語はついに大詰め。これは25話オーバー待ったなし、あとはどれだけオーバーしすぎず終われるか……という勝負になりました。

 ただでさえプロットも完全に尽きて(17話以降、毎日更新しながらなんとかプロット書けたのが、第21話覚悟の冒頭までだった……)、あとは自分との戦い!


 極力、短く終わらせるにはどうしたらいいか!!


 ここで私の頭が囁きます。


「ダドリーと2回戦おうと思ってたけど、これもう最後のダドリー戦飛ばして良くね??」


 そう、元はちゃんとダドリーが魔法を振り回して戦う展開を考えていたのですが。

 実は彼はかなりの実力者で、作中最高ランクの魔法「無詠唱二属性同時撃ち」が出来る人だったのですが。その伏線として、クロウリー戦の時「普通の人は口頭で呪文を言う限り、一度に1つしか魔法を使えない」(=無詠唱なら一度に2つ魔法を扱える)という情報まで出しておいたのに。


 もうダドリーはいいから、魔王と戦おう!


 と決意して、それでも最後6話かかってしまいました。最後なんか1万2千字も書いてね、それでもね……。字数チャレンジは完敗しました。


 ですが、やりたいことを全部なんとか詰め込んで、ここまで一族全員出したなら最後ラッセルも華々しく登場して貰おう、そんで魔王にトドメさしてもらおう! と決意して。だったらサマンサもかっこいいとこ見てもらおう! と派手な魔法使わせて。


 冒険者ウィルマー一行は、元々字数が許せばラストで逆スケープゴートになってもらうというシナリオを考えてたので、ラッセルが魔王を派手に倒したのを肩代わりする役目を負ってもらって。


 やりきった! やりきったぞ!!


 日数も多少オーバーしてしまいましたが、一ヶ月フルで睡眠時間を削りまくった結果としては、まずまずのタイムで書き終えられたと思います!



 強いて言えば、最後の最後、ルーファスとフランシーヌの関係をどう決着つけよう……というのは悩みどころでした。もう完全にバラしちゃって、初めてパトリックが「ルーファスとして」フランシーヌに本音の会話をする……というパターンも考えましたが、それはやはりあまりにも影の一族として軽率な行動だと思い直し、お互い誤魔化しつつの爽やかな友情エンドにとどめました。


 当初からフランシーヌは恋愛対象としての存在ヒロインではなく、「女の子」だけど強い信念を持ち、戦い続ける気高い人。という設定だったので、この形で終われたのは心から良かったと思います。





 


 長くなりましたが、作品裏の紆余曲折、いかがでしたでしょうか。


 次の更新は世界、魔法の設定についてです。


 バトルの勝敗を決めるルール、作者の私は細かく決めてますが、読者の方にはわかりにくかったと思います。その補足と紹介です。興味のある方が居ればどうぞ読んでみてください。

 

 


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