11、怨霊

 私、ちょっと死んじゃったので怨霊になりました。

 この家に取り憑いて入るもの全て憑き殺してやるわ。

 最初は様子を見に来た大家さん、次に呼ばれてきた警察のひと。

 うわあ……死体ってこんなに腐るのね。自分のだけど。

 それから頼まれてきた清掃業者の人。

 我が恨みを思いしれーなんてね。別にこれといった恨みもないけどさ。

 死んだら怨霊になって無双とか聞いたからやってみたかったの。

 生前は冴えない女の子だったけれど、これからは違うのよ。

 スーパーミラクルウルトラ怨霊になってスターダムをのし上がってやる。

 日本四大怨霊とか呼ばれちゃいたいお年頃。

 さあて、次は誰がくるかなー。


 なんて思ってたところをドガンと音がして、屋根が崩れた。グシャリと柱が折れて梁が落ちてくる。

「え、え……」

「理不尽なのよ!」

 油圧ショベルの操縦席でスーツの女性が叫んだ。誰!? というか私の家! どうしてくれるのよ!

「だからホラーって大嫌い。ちょっと死んだくらいで調子のってんじゃないわよ」

「ええ……」

「そこ!」

 ベリベリと屋根と壁が切り取られ、剥がされていく。あっという間に外から丸見えだ。

「この、逆恨みしやがる卑怯者が!」

「だ、だ、だって怨霊って、そういうもんだっていうから……みんな、怨霊になったら好き放題できるってウワサして、私はちゃんとその通りに……」

「うるさい! 黙って死ね! ここまでやらかしたらお前が悪い!」

 家の半分を崩されて呆然とする私の前に、三枚のお札が降ってきた。なに? 神社札みたいな……。

「え?」

「これは大家さんのぶん!」

 それに触れた途端、強力な力でぶん殴られたように吹っ飛ばされる。あ、お空きれい。

「これは警官さんのぶん! これは清掃業者さんのぶん!」

 さらにぶん殴られ、蹴り上げられ、私は空を舞った。痛い痛い痛い。こんなに痛いなら怨霊なんてやっていたくない。

「勝手に死んだ分際で他人の命を奪おうなんてざけんじゃねえよ。思い知って死にやがれ!」

「わー! 成仏しますー!」

 その油圧ショベルの一撃が家の残りを全て破壊した。もうもうと舞い上がった土埃と共に怨霊は消えていた。



「妖怪、いや怨霊……? 処分完了。ついでに家の解体も」

 油圧ショベルに乗っていた女性……ロアは鼻息荒く言い放ったのだった。

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